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天声人語

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2010年2月16日(火)付

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 碁や将棋にはうといが、方寸の盤をめぐる話は面白い。平安期の説話集『今昔物語』に、あやしい碁打ち女の話がある。天皇の碁の師でもある寛蓮という名人が、ある日、通りで少女に呼び止められる▼案内された家の女主人に対局を望まれ、気楽に打ち進めた。だが、気がつくと名人の石はみな殺しになっている。こんなはずはない。女は何者か、と怖くなった名人は逃げ出してしまう。京の街はしばらく、この噂(うわさ)で持ちきりになったという▼東京の小学5年藤沢里菜(りな)さんの快挙を聞いて、つい、そんな話を思い出した。日本棋院の試験に見事合格し、男も含めて史上最年少の11歳半で囲碁のプロ棋士になると、先ごろ報じられた。「小学生のうちにプロになりたいと思っていた」と言うから、万年ザル碁の凡人は脱帽である▼将棋界では17歳の女流名人が誕生した。島根の高校3年里見香奈さんは「倉敷藤花(くらしき・とうか)」という女流タイトルをすでに持ち、10代での二冠は約27年ぶりになる▼こちらのプロ入りは12歳だから、「栴檀(せんだん)は双葉より芳し」の諺(ことわざ)を地でいく。「女流名人にふさわしい人になるよう、立ち居振る舞いに気をつけて棋力向上に努力したい」。当たり前といえば当たり前の抱負が、当節、頼もしく新鮮に響く▼ところで冒頭の碁打ち女の話は、朝日歌壇の選者馬場あき子さんの『歌よみの眼』に教わった。馬場さんによれば、かの紫式部も清少納言もかなりの碁好きだったらしい。脈々たる歴史というべきか。囲碁も将棋も、女流の伝統に咲く新たな大輪に期待が膨らむ。

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