HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 61657 Content-Type: text/html ETag: "a2917-164b-e9d8680" Expires: Sun, 14 Feb 2010 21:21:10 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sun, 14 Feb 2010 21:21:10 GMT Connection: close 殺人時効撤廃 凶悪事件の抑止につなげたい : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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殺人時効撤廃 凶悪事件の抑止につなげたい(2月15日付・読売社説)

 殺人事件を犯しても、25年が経過すれば罪に問われなくなる公訴時効を撤廃する。

 時効制度のこのような見直し案を法制審議会の部会が決めた。法制審の答申を経て、法務省は刑事訴訟法改正案を今国会に提出する方針だ。

 犯人にとっては、逃亡生活に終わりがなくなる。時効撤廃を凶悪事件の抑止につなげたい。

 時効が設けられているのは、時間の経過とともに、被害者や社会全体の処罰感情が薄れるといった理由からだ。殺人や強盗殺人など死刑も適用される罪の時効は現在、25年となっている。

 これに対し、犯罪被害者の多くが「時を経ても処罰感情が薄れることはない」と、時効撤廃を求めていた。制度の見直しはこうした声を尊重した結果である。

 最近の世論調査では、時効制度を知っている人の6割が25年の時効について「短い」と回答した。その理由としては、「時間の経過によって犯人が処罰されなくなるのはおかしい」が最多だった。

 多くの人が、「逃げ得は許せない」と感じていることも、制度改正の背景にあるといえよう。

 今回の見直し案では、人を死亡させた殺人以外の罪の時効についても、2倍に延長する。最高刑が無期懲役である強姦(ごうかん)致死などの時効は、15年から30年になる。

 注目すべきは、過去に発生し、まだ時効になっていない事件にも撤廃・延長を適用するとしている点である。

 憲法は、「実行の時に適法だった行為については、刑事上の責任を問われない」と定めている。事件が起きた後に、新たな刑罰を設けたり、刑を重くしたりしたうえで、過去にさかのぼって処罰することを禁じた規定だ。

 時効の撤廃・延長はこれに反するとの意見もあったが、法務省は「実行時に適法だった行為を処罰したり、刑を重くしたりするわけではない」との見解を示した。

 法制審でも、これに沿った意見が多数を占めたように、妥当な判断といえるのではないか。新制度になれば、東京・世田谷一家殺害事件などの時効はなくなる。

 時効の撤廃には課題もある。時間の経過とともに、有力な証拠は得にくくなる。DNA鑑定などの科学捜査が進歩したとはいえ、捜査当局には証拠を慎重に見極める姿勢が改めて求められる。

 信用性に乏しい証拠による強引な立件は冤罪(えんざい)につながる。今後の捜査のあり方などについて、国会で議論を深めてほしい。

2010年2月15日01時32分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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