HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 15 Feb 2010 01:16:17 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:もんじゅ容認 未来図が見えないぞ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

もんじゅ容認 未来図が見えないぞ

2010年2月15日

 高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の運転が十四年ぶりに再開される見通しだ。電力は必要だ。が、エネルギー政策の未来図なき実験は、海図のない航海のようなものではないか。

 夢の原子炉。だがそれは、本当に幸福をもたらす夢なのか。

 高速増殖炉は、使用済み核燃料を再利用する核燃サイクル技術の本命といわれている。リサイクルの効果が一、二割にとどまるプルサーマルとは違い、理論上は核分裂を利用して、発電をすればするほど核燃料が増えていく。

 政府の原子力安全・保安院が運転再開を容認し、地元自治体の同意が得られれば、来月にも運転が再開される。だが、もんじゅは、運転データを集めるための「原型炉」。二〇五〇年になるという「商用炉」運転への道のりはまだ遠く、平たんとは言い難い。

 長い沈黙の原因になったナトリウム漏れ事故は一九九五年暮れ、発電開始のわずか三カ月後に起きた。もんじゅは原子炉から熱を取り出す冷却材として、水ではなく、ナトリウムを使う。ナトリウムは水や酸素に反応し、激しく燃える性質がある。一般の原発より格段に、管理・制御が難しい。

 ナトリウム漏れにより発生した火災現場の映像が、事故が軽微に見えるよう公表時に編集されていたことなども、原発不信に拍車を掛けた。福井県の立ち入り調査で実情が明らかにされた。改造が施され、〇七年五月にナトリウムを再び注入した後も、施工不良や誤判断などの人為的ミスが重なって、運転再開は四度も延期されてきた。毎年二百億円近い巨額の運転経費がかかるのも気がかりだ。

 欧米が開発から手を引く一方で、経済新興国の中印、ロシア、韓国が研究、商用化への速度を速めている。増え続ける高レベル放射性廃棄物や温暖化対応などの必要性も確かにある。だからといって、不信や不安を残したままで、実験を急ぎすぎるべきではない。

 日本の将来のエネルギー政策の中に、もんじゅをどう位置付けていくか。そのために、いつまでに、どのように、安全面やコスト面のデメリットを乗り越えていくべきか。乗り越えていけるのか−。国の原子力ビジョン、「原子力と共存する暮らし」の具体的な未来図をまず示し、地元住民とすべての電力需要者の十分な理解を求めるのが先だ。原子の火を賢く使う「もんじゅの知恵」はまだ足らない。

 

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