HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 17901 Content-Type: text/html ETag: "61377-45ed-e896eac0" Cache-Control: max-age=5 Expires: Sun, 14 Feb 2010 21:21:11 GMT Date: Sun, 14 Feb 2010 21:21:06 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2010年2月15日(月)付

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 73歳が詠むから許される句もある。〈ときめきが動悸(どうき)にかわる古稀(こき)の恋〉。全国老人福祉施設協議会の第6回「60歳からの主張」川柳部門には約2千句が寄せられた。入賞作と、最終選考に残ったものから紹介する▼〈掛けてきた年金実は賭けていた〉。社会へのまなざしは鋭い。〈日本発武士道にない派遣斬(ぎ)り〉。福祉政策は、老より幼に重きを置くかに見える。そこで〈敗戦国興して老後報われず〉▼〈カラオケで美声聴かせて入れ歯落ち〉〈置き場所を思い出せない備忘録〉と、老いを笑い飛ばす自虐の句も目立つ。〈角が取れ丸くなるのは背中だけ〉〈遼君のスイング真似(まね)て腰痛め〉など、綾小路きみまろさんの名調子で聴いてみたい▼名刺抜きの付き合いに慣れるのもひと苦労で、〈定年前の肩書き言うな居酒屋で〉。しかし男というもの、いくつになっても妙なライバル意識が抜けない。〈買った墓地嫌いな奴(やつ)の相向かい〉▼〈新婚と思って老々介護する〉。何十年も一緒にいれば、夫婦の仲は様々だ。〈補聴器が老妻の愚痴ひろってる〉。かと思えば〈老妻とダジャレの応酬日々楽し〉という関係も。皆が夢見る共白髪の日々にも、ふと我に返る時がある。〈婆(ばあ)さんや茶柱立って何がある〉▼優秀賞は、冷めた視線で〈喜寿祝い寿司(すし)に集まり我(わ)れ孤独〉。ごちそう目当ての親族を、声ではなく字でチクリとやるのが老境。同様に〈子や孫が無理はするなとこきつかう〉。まあ、使う気にさせる体も素晴らしい。万事、前向きに考えたい。〈物忘れ嘆くな頭のダイエット〉

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