HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 60325 Content-Type: text/html ETag: "f5014-11d2-e606ddc0" Expires: Fri, 12 Feb 2010 22:21:15 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 12 Feb 2010 22:21:15 GMT Connection: close 2月12日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



現在位置は
です

本文です

2月12日付 編集手帳

 谷崎文学や川端文学などを英訳したE・G・サイデンステッカー氏の自伝に、翻訳者の嘆きを語った詩が出てくる◆〈広い世界のどこでも同じ/まったくもってひでぇ話/褒められるのはいつでも作者/(けな)されるのはいつでも訳者〉。それでも翻訳に精魂を傾けるのは、その作品に、作者に、骨の髄まで()れ込めばこそという◆一つ小説を書くごとに、ジョイスの偉大さがわかる。もっと小説を書いてジョイスを知りたい――ジェイムズ・ジョイス『若い藝術家の肖像』の翻訳で今年の読売文学賞に選ばれた丸谷才一さん(84)が本紙で語っていた。愛の告白として、これ以上の言葉はあるまい◆丸谷さんが古希を迎えたとき、親しい編集者が歌舞伎のせりふをパロディーに仕立てて贈ったという。丸谷文学の作品名が織り込んである。〈知らざあ言って聞かせやしょう エホバの顔を避けてより〉に始まり、〈たった一人の反乱と 人は言えども大きなお世話…〉とつづく◆締めの名乗り。〈めでたく七十路迎えたる 丸谷のジョイス才一たあ おれがことだ〉。今度の受賞をあらかじめ祝ったような名せりふである。

2010年2月12日01時46分  読売新聞)
現在位置は
です