学校週五日制の維持が難しくなり、土曜日に授業を行う小中学校や高校が増えそうだ。これから教育課程が過密になるのだから、仕方あるまい。土曜日の使い方は学校に裁量を委ねてはどうか。
東京都教育委員会は土曜日に正規の授業を行えるとの通知を出した。保護者に公開したり、地域住民が協力するという条件付きで一カ月に二回まで実施できる。
学校五日制は「ゆとり教育」のもと、一九九二年から一部実施が始まり、二〇〇二年四月から完全移行した。
しかし、すでに土曜日に運動会や授業参観をしている学校は少なくない。中央教育審議会は〇八年一月、地域公開という形での土曜活用を打ち出し、都教委も同年十二月に公開授業などで土曜日を使えるとの見解を示している。
通知は今更の感があるが、学校から土曜授業への要望や問い合わせが多いからだ。そんな事情に目を向けなければならない。
現行のカリキュラムを学校五日制でこなしていくのは、なかなかの過密スケジュールという。風邪やインフルエンザが流行すれば、授業時間確保のために冬休みや春休みを短縮せざるを得ない。
四十年ぶりに内容が増えた新学習指導要領は一一年度に小学校、一二年度に中学校で完全実施となるが、本年度から一部は前倒しで実施されている。完全実施になれば、授業時間が足りなくなる懸念が指摘されている。
文部科学省は「学習指導要領は学校五日制のなかでこなせる」との姿勢を崩していない。
私立中の一部は土曜授業を行っており、公立中の生徒でも塾に通って勉強している子がいる。経済的にゆとりがある家庭の子供は土曜日も学習しており、経済格差が学力格差につながらないだろうかという保護者の不安も、現状のままでは払拭(ふっしょく)できない。
「家庭や地域で過ごす時間を増やす」という学校五日制の趣旨は理解できるが、現実は理念との隔たりが甚だしい。土曜日の使い方はそれぞれの学校の判断に任せていいのではないか。
ただ、土曜授業の復活だけでは問題解決とはいかない。教師の質を高め、人員も増やさねばならないだろう。新指導要領の実施後に学校現場がさらに多忙化しては学力向上を図るのは難しくなる。
四十人を上限とする学級編成を見直そうとの動きも出ている。先生がきめ細かな指導を行えるためには少人数学級も進めたい。
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