HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 12 Feb 2010 22:16:23 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:イラン核開発 孤立深める危険な賭け:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

イラン核開発 孤立深める危険な賭け

2010年2月12日

 イランがウランの濃縮度を高める作業に着手した。技術力はまだ低いが、やがて核兵器に使える高濃縮ウランを製造する恐れもある。新たな核保有国を生まないよう、国際社会の結束が必要だ。

 イランはこれまで濃縮度3・5%のウランを製造してきたが、今後ナタンズの核施設で20%に高める。医療用アイソトープに使うのが目的で、国際原子力機関(IAEA)査察官も立ち会うという。

 だが将来、濃縮度を90%以上に高める技術を持てば核兵器の開発も可能になる。オバマ米大統領は濃縮活動をやめなければ「次に取る措置は制裁だ。数週間内に枠組みを作る」と警告した。イスラムとの対話を掲げたオバマ政権が、圧力へとかじを切ったことになる。

 ウラン濃縮をめぐっては昨年秋に一時、妥結の兆しもあった。

 イランが保有する低濃縮ウランを国外に搬出し、ロシアやフランスが濃縮度を高め燃料化して再び国内に戻す−。国連安保理の五常任理事国とドイツが構想を提示した。備蓄する濃縮ウランを減らし軍事転用を防ぐ狙いだったが、合意できなかった。

 なぜイランは核開発に固執するのか。

 核拡散防止条約(NPT)に加盟し、原子力発電など核の平和利用の権利があると主張する。

 この建前の一方で、イランは米国とは三十年間対立し、核戦力を持つとされるイスラエルとの緊張もある。イスラム共和制を脅かす勢力に対する抑止力として、核開発を進める狙いは隠せない。

 イランは国連安保理で三度の制裁決議を受けている。核開発能力を高める今回の行為は、孤立をさらに深める危うい賭けといわざるを得ない。

 米国は安保理に新たな制裁案を提示する準備に入った。ロシアは制裁に同調する可能性があるが、中国は外交による解決を主張している。いま米中は台湾への武器輸出などをめぐって対立し、イラン制裁での協調は難しそうだ。

 一方で、イラン政権内部で強硬策か、対話かという意見対立があるとの観測もある。外務省高官は「まだ対話の窓は開いている」と述べ、ウランの国外搬出について修正案があれば、再度協議に応じてもよいと表明した。

 イランの瀬戸際戦術を見極める必要がある。核問題は長丁場になりそうだ。制裁という圧力を視野に入れながらも、交渉に引き出す外交努力も続けたい。

 

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