衆院予算委員会の集中審議では「政治とカネ」をめぐり、納得のいく説明は聞かれなかった。石川知裕衆院議員の離党も、最低限の「けじめ」にすぎない。民主党は政権与党として襟を正すべきだ。
政権交代で広がった視界を「政治とカネ」の暗雲が遮る。日本政治の現状にはそんな例えが合う。
小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体をめぐる政治資金規正法違反事件で起訴された元秘書の石川氏に対し、民主党は党としての処分はしない方針だ。
小沢氏は「国会議員の職責、権限、職務について責任を問われているわけではない。起訴理由も、事務的なミスだ」と説明した。
政治資金規正法は虚偽記載などで禁固刑や罰金刑が確定した場合の公民権停止を定めており、石川氏は、罰金刑以上が確定すれば議員を失職することになる。
議員当選前に犯した罪だからといって、免責されるような軽いものではない。
そもそも石川氏は、収支報告書に不適切な記載をしたことは認めており、単純な事務的ミスでないことは明らかだ。
小沢氏も、資金管理団体による土地購入の原資に関する説明を「政治献金」「借り入れ」「個人資産」と二転三転させており、何が真実なのか判然としない。
小沢、石川両氏は政治家の責任として、政治倫理審査会での審議や参考人招致に応じるなどして、国民への説明に努めるべきだ。
鳩山由紀夫首相も民主党代表として小沢氏に対し、真実を明かすよう指導力を発揮してはどうか。
そもそも民主党は野党時代から、「政治とカネ」の問題や政治倫理に対し、厳しい態度で臨んできたはずではなかったか。
二〇〇四年には、秘書給与を詐取した詐欺容疑で逮捕された佐藤観樹、学歴詐称疑惑が浮上した古賀潤一郎両衆院議員を除籍処分とした。両氏は議員辞職している。
政権に就いた途端、そうした姿勢を一変させ、身内に甘くなるというのでは、国民は納得がいかない。政権交代に「政治とカネ」の問題からの決別を託した有権者にとっては、裏切り行為にほかならない。
民主党は、石川氏離党と衆院予算委での集中審議で、「政治とカネ」の問題に一定のけじめをつけたつもりかもしれないが、自民党政権時代とは違う政治的、道義的責任の取り方を示す必要がある。
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