夏のオリンピックに冬の競技が組み込まれたことがある。1908年のロンドン五輪にフィギュアスケートがお目見えし、のちの夏季大会ではアイスホッケーも仲間入りした。人工室内リンクができて一年中滑れるようになったからだ。
▼それでも、フランスのシャモニーでスキー競技なども加えた初の冬季大会を開くまでには曲折があったという。雪がなければ始まらないのがスキーの試合だ。開催地が限られてしまうと心配する声が強かったらしい。たしかに五輪史をひもとけば暖冬や雪不足に悩んだ例は少なくない。冬の大会の宿命ではあろう。
▼4年ぶりの祭典がいよいよ幕を開けるカナダのバンクーバーも記録に残る暖冬と聞く。モーグルの練習コースは近くの山からかき集めた雪を積み重ねて造ったと、本紙取材班が伝えていた。振り返れば前回のトリノもひどい雪不足だった。移ろう天候まかせの冬季五輪とはいえ、近年の異変はやはり度外れている。
▼米国の東部などは歴史的な大寒波に見舞われている今年の冬だ。両極端が同居する地球環境の乱調がどうにも不気味ではないか。かつて冬季大会を始めたころには思いも及ばなかった危機が迫っているのかもしれない。バンクーバー17日間の雪と氷の熱戦に声援を送りつつ、そんなことを気に留めておいてもいい。