バンクーバー冬季五輪が始まる。五輪はスポーツの多様な魅力を満喫できる、またとない機会だ。自国のメダルだけにとらわれず、さまざまな競技の味わいをじっくりと楽しみたい。
今回で二十一回目を迎える冬季オリンピック。カナダのバンクーバーを舞台とする今大会は、十二日(日本時間十三日)から二十八日(同三月一日)まで、十七日間にわたって行われる。実施される七競技、八十六種目は史上最多。これも最多の八十二カ国・地域が参加する予定だ。
日本からは男子四十九人、女子四十五人の計九十四選手が出場する。百人を切ったのは四大会ぶりという少数精鋭だが、女子の比率はこれまでの冬季大会で最高。選手団長も夏冬合わせて七大会に出場した橋本聖子氏が務める。女性の団長は初めて。新たな時代を感じさせる編成といえそうだ。
前回のトリノ大会で、日本のメダル獲得は荒川静香選手(フィギュアスケート)の金一個に終わった。今回は、フィギュア、モーグル、スピードスケート短距離、ノルディック複合などにメダルの期待がかかる。複数の金メダルの可能性もあるのではないか。
ただし、自国のメダルにばかりこだわるべきではないだろう。四年に一度の大舞台は、さまざまな競技のトップ選手が世界中から集まって、鍛え抜き、磨き抜いた技と力を出し尽くす特別な場所である。メダルの数だけが、人気競技のスターの登場だけが見どころではない。それではオリンピックのほんの一部しか楽しめない。
ことに冬季五輪では、ふだんはあまり目にすることのない競技をいくつも見ることができる。スキーの距離競技、ボブスレー、リュージュ、スケルトンのソリ競技、バイアスロン、カーリングなどは日本ではさほど注目度が高くないが、じっくりとテレビ観戦すればその面白さがよくわかるはずだ。そうなれば、なじみの薄い競技もがぜん輝きを増すに違いない。
日本勢の活躍、それもメダル獲得にばかり注目が集まりがちなオリンピック。が、ちょっと視点を変えてみれば、思いがけない魅力や新鮮な面白さに出合えるのだ。幅広く味わい、楽しんでこそのスポーツなのである。
見慣れぬ競技や海外の選手のさまざまな姿を通して、世界の多様な文化がふと見えてくることもあるだろう。四年に一度の夢舞台は、視野を広げるための機会としても生かしたい。
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