二〇一〇年度の診療報酬改定が十日までの中央社会保険医療協議会(中医協)でほぼ合意された。医療機関の再診料の統一、医療費明細書の無料発行の義務化など当たり前のことがようやく実現する。
健保組合などから医療機関に支払われる診療報酬を平均0・19%引き上げることは昨年末、政府レベルで合意されていた。最大の論点は、この上げ幅の中で医療財源を個々の医療行為などにどう配分するかだった。救急、小児、産科などを中心に医療崩壊が指摘されているだけに、それを防ぐため診療報酬で方向性を示すことが強く求められていた。
今回の改定では長年の懸案である診療所と病院(二百床未満)の再診料が初めて統一される。これまで診療所七百十円、病院六百円で、同じ医療を受けるのになぜ差があるのか患者らから疑問が出ていたが、開業医中心の日本医師会の反対で統一できなかった。
今回も開業医代表の委員を中心に医療側委員は最後まで診療所の再診料引き下げに反対したが、最終的には公益委員の裁定で、六百九十円に統一が決まった。
外来部門で浮く財源は、診療時間外に患者からの問い合わせに応じた場合の「地域医療貢献加算」や小児科救急外来の充実、勤務医の待遇改善などに振り向けられる。適切な見直しといえる。
医療機関に対し、原則無料で患者に医療費の明細書付き領収書の発行を義務付けることもようやく実現する。一般社会では消費者がものやサービスを購入すれば、ごく普通に領収書や明細書がもらえるが、医療界ではこの常識が長い間、通じなかった。
二〇〇五年末、当時の政府・与党の「医療制度改革大綱」でも「医療費の内容が分かる領収書の発行の義務付け」を打ち出していたが、医療側が抵抗していた。
現在、大病院では義務付けされているほか、自発的に発行している医療機関もあるが、全医療機関に義務付けする意義は大きい。
明細書によって患者は自分が受けた医療の内容を知ることができ、増大する医療費への理解を深めると同時に、医療費の透明性が高まり、無駄を除くきっかけにもなるからだ。従来のような「努力目標」では、こうしたことがあまり期待できなかった。
今回の改定だけでは、医療再生を図ることは難しい。そのためには、決められた財源をいかに有効に使うか。診療報酬の配分の見直しを不断に行う必要がある。
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