HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Wed, 10 Feb 2010 03:15:11 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:貧困ビジネス 支援のはずが巨利とは:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

貧困ビジネス 支援のはずが巨利とは

2010年2月10日

 嘆かわしいことだが、生活困窮者を対象にした「貧困ビジネス」が盛んだ。本来は支援事業なのに、業者の中には多額の脱税容疑も見つかった。運営は適正か、行政は監督体制を見直してほしい。

 貧困ビジネスという言葉はそもそも矛盾を含んでいる。東京・日比谷の派遣村を開いた湯浅誠さん(現内閣府参与)の造語で、貧困でビジネスが成立するなら貧困の固定化になってしまうと反語的意味を込めていた。

 それが実際には、もちろんNPOなど純粋な支援事業者の方がたくさんいて必要な存在となっているが、一部に行政の法律を逆手にとるような運営者が出てきたのも現実だ。

 その一つが、関東地方や愛知県に二十施設以上を持つ大手のFISで、経営者らが、三年間で計五億円の所得を隠していたとして名古屋地検に起訴された。生活困窮者のための生活保護費を吸い上げていたとみられる。

 路上寝泊まりの人に「暖かい所がある」と声をかけ、一緒に役所の窓口で生活保護を申請する。月々の代金はその生活保護費から支払ってもらう。部屋は古い社員寮などを薄い木板で仕切った二、三畳の広さ。食事はご飯とレトルト食品、カップめんなど。月十二万円前後の生活保護費から、代金約九万円を引かれたという。不満のない人もいたが、結果は巨利を生んでいた。

 千葉市や愛知県岡崎市では、宿泊所の元入所者らが、保護費の大半を不当に吸い上げられていたとして、業者を提訴している。

 本来はホームレスたちに一時的に宿泊場所を無料または低額で提供し、職探しなどを支援する福祉的な施設のはずだ。厚生労働省の調べでは、全国で四百三十九施設あり、入所者は約一万四千人にのぼる。無届け施設も千四百以上あるという。

 施設の運営や生活保護費の支給などで法に触れはしないが、施設の生活の度を越える劣悪さや生活保護費の使途への目配りに落ち度があったとすれば、行政には猛省してほしい。人を助けるお金は一円もむだにはできないし、もっと多くの人を救える。

 厚労省の検討チームは近く規制強化を含む検討結果をまとめる。しかしよく考えてほしい。困窮を自ら望んだはずもない人たちの救済と支援は本来行政の仕事であり、その目標は就労を助け、日本のどこでも困窮者ゼロにすることだと。

 

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