HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 09 Feb 2010 22:16:20 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:トヨタ自動車 一流こその危機管理を:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

トヨタ自動車 一流こその危機管理を

2010年2月9日

 トヨタ自動車の信頼が大きく揺らいでいる。相次ぐ自主改修、リコール(無料の回収・修理)が直接の原因だが、トヨタの後手の対応や姿勢も消費者の不安、不信を増大させている。

 週末の五日夜、トヨタの豊田章男社長が名古屋市で緊急会見し、一連の問題について陳謝した。しかし、ブレーキに関する苦情が相次いでいる「プリウス」について具体的な対策は示さなかった。会見が行われた時間は米国では朝。海外メディアの質問に英語で「ビリーブ・ミー(私を信じてほしい)」と答える社長の姿は米国のテレビでも報道されたが、米国のトヨタ車ユーザーが納得できる内容ではなかっただろう。

 豊田社長が何度も繰り返した言葉は「お客さま第一」。だが、会見ではそれが伝わってこなかった。トヨタはプリウスのリコール実施を五日には販売会社に連絡していた。それならば、なぜ会見で社長が明言できなかったのか。「お客さま第一」とは言い難い。

 一連の問題では、ユーザーからの情報の受け止め方にも疑問が残る。米国、欧州、中国などで実施するアクセル部品のリコールでは、二〇〇八年十二月以降、欧州で複数の顧客から不具合の苦情があったにもかかわらず、トヨタが米国でのリコールを発表したのは今年一月になってからだった。

 プリウスのブレーキ問題では、昨年七月に千葉県松戸市で起きた事故を受け、トヨタは社内で調査したが、車両には欠陥なしと結論付けた。その後、国土交通省やトヨタ車の販売店に苦情が相次いだものの、トヨタは既に販売した車には対策を取らなかった。

 ユーザーからの苦情を真摯(しんし)に受け止め、原因を究明して必要なら早くリコールに踏み切る。これが当然の対応だ。そうしておけば、トヨタの傷もここまで深くはならなかったのではないか。巨体になったトヨタの中で、苦情という一見ささやかだが実は貴重な情報が生きなかったのならば、危機は重大と言わねばならない。

 危機対応の誤りが企業の致命傷になりかねないことは過去の多くの事例が示している。危機管理で大切なのはマニュアルではなく「お客さま第一」の理念が一人一人の社員に浸透しているかどうかだ。前原誠司国交相は「顧客の視点が欠如している」と批判した。信頼の回復へ、顧客の立場という原点に戻って考えてほしい。

 

この記事を印刷する