HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Wed, 10 Feb 2010 02:15:19 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:ある夏、仕事から帰った夫がビールを飲んで間もなく倒れ、救急…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2010年2月10日

 ある夏、仕事から帰った夫がビールを飲んで間もなく倒れ、救急車で病院に運ばれた。血圧が高かったから、脳出血に違いない。妻は早く治療してと訴えたが、夫はすぐに死亡した▼病院の医師は、脳出血かどうか判断しかねると警察に変死届を出した。病死だと思った監察医が解剖すると、胃から検出されたのは青酸だった▼酒乱の夫を殺そうと、妻がビールに青酸を入れていたのだ。医師が妻の言う通り、病死の死亡診断書を交付していたら、真相は闇に葬られていたと元東京都監察医務院長の上野正彦さんは、ロングセラーの自著『死体は語る』で紹介している▼埼玉と鳥取県の連続不審死事件で、二人の女と接点がある死者の多くは自殺や病死、事故死とされた。解剖していれば、死因が特定されていた可能性もあったはずだ▼変死者の死因を究明する監察医制度があるのは東京二十三区や大阪、名古屋市などに限られる。二十三区だったら早く事件化したと指摘する声もあるが、大都市に偏った監察医制度は、法の下の平等に反しないのだろうか▼「もの言わぬ死体は決して嘘(うそ)を言わない。丹念に検死をし、解剖することによって、なぜ死に至ったかを、死体自らが語ってくれる」(同書から)。死因を特定し疑いが晴れれば人権も守れる。約二万の遺体を見てきた法医学者の訴えは「死後も名医にかかれ」である。

 

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