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社説2 「子の奪取」条約に加盟急げ(2/9)

 国際結婚が破綻した結果、子の親権をめぐる紛争が起きる。それに対処する国際ルールが「ハーグ条約」だ。現在81カ国が加盟している。主要7カ国(G7)で唯一加盟していない日本は加盟を急ぐ必要がある。

 条約は正式には「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」という。16歳未満の子が定住する国から不法に国外に連れ去られた場合、連れ去られた先の国が子を元の国に戻す義務を負う仕組みを定めた条約だ。

 例えば、日本人の母と米国人の父のもとで米国で暮らす子を母が一方的に日本に連れ帰れば、日本政府に子を米国に送り戻す義務が生じる。

 日本の国際結婚は今、年間4万組に上っている。それに伴い、子の連れ去りをめぐる紛争も増えている。

 各国政府によると、日本人の親による一方的な連れ去りが問題化しているのは米国で約70件、英国、フランス、カナダでもそれぞれ三十数件あるという。逆に、外国人の親が子を日本から連れ去った例も30件以上あるとみられている。

 日本が条約に加盟していないため、紛争に有効に対処できない。親が子に会うことができず、欧米では日本人による子の連れ去りが「拉致」として犯罪扱いもされている。

 未加盟の理由には、法制度を含む文化の違いが挙げられる。確かに、離婚後は父母どちらかが親権を持つ日本と、共同親権で父母双方が子育てを担う制度が普及している欧米とは異なる。しかし国際結婚である以上、多くの国が認めたルールによって紛争に対処するのが筋だ。

 条約は、子をめぐる紛争は「連れ去った者勝ち」ではなく、生活基盤があった国に持ち帰って解決すべきだという考え方でつくられた。そうした考え方に問題はなかろう。

 帰国した日本人の多くが家庭内の暴力(DV)から逃れた女性だという指摘もあるが、条約は子に重大な危険があれば送還しなくてもいいという例外規定を設けている。

 米英仏などからの加盟圧力の高まりを受け、外務省は昨年末に「子の親権問題担当室」を設置、法務省など関係省庁と加盟のための条件の検討を始めた。加盟には法律や組織の見直しが必要で、時間がかかる。早期に準備を進めねばならない。

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