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「品格」が問われ続けた横綱、朝青龍関が引退した。直接のきっかけは泥酔しての暴行騒ぎだが、身勝手な行動や行儀の悪さでトラブルを重ね、角界を去らざるをえなくなった。
スピードとみなぎる闘志で土俵を沸かせた、やんちゃな横綱の退場を、寂しく感じるファンも多い。
責任はもちろん、本人と指導力を欠いた高砂親方にある。だが、一連の騒動は、相撲界の課題もあぶり出した。
大相撲はプロスポーツであると同時に、儀式性を重んじる世界だ。勝てば地位も収入も上がる強者優先の仕組みと、伝統や品格といった精神論が併存する。だから力士には、強さだけではないものが求められる。
確かに朝青龍には自覚と努力が不足していた。しかし、モンゴルから来た少年が入門からわずか4年余で最高位に上り詰め、角界を背負う立場になったことを考えると、支える態勢が十分だったのか、疑問が残る。
新弟子を「国技」の担い手にまで育てるには、心身両面での丁寧な指導が必要だ。日本の言葉や文化に慣れない外国人ならばなおさらである。親方任せでなく、相撲協会全体で身を入れて取り組まねばならない。
いまや幕内の4割は外国出身。大相撲は外国人に頼らざるをえないのが実情だ。彼らに相撲の伝統を担ってもらうには、日本人でも説明するのが難しい「品格」という言葉を押しつけるのではなく、その内実を詳細に具体的に語り聞かせることが不可欠だろう。
様式や約束事には本来、深い意味がある。伝統の継承とは、それを掘り下げて理解したうえで身につけることだ。形をなぞることではない。そのための教育や研究には、外部の知恵や力を大いに借りたらいい。
外国人を受け入れていくうえで、検討すべきことは他にもたくさんある。たとえば、どんな立派な実績を残しても、引退後は日本国籍に変えなければ、親方として指導や協会運営に加われない仕組みはこのままでいいか。
頭にまげを乗せている純日本的な集団が、優秀な外国人に支えられている。そこに私たちがいま、あるいは将来、直面する問題が突出して表れていると見ることもできる。
日本に暮らす外国人は増え続けている。こちらの考え方に合わせてくれる人は歓迎し、そうでない人は排除するというのは、もはや通用しない。
同じ社会を構成する仲間として、相手にわかりにくい固有の習慣や伝統があれば、丁寧に説明し、理解を求める。あるいはこちらが変えるべきところは、変えていく。その積み重ねが、お互いの信頼を築いてゆくはずだ。
多様な文化が共生する社会をつくるために「朝青龍騒動」から酌むべきことは、実は少なくないのである。
主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が北極圏にほど近いカナダのイカルウィットで開かれた。儀式化を反省しG7の意義を原点から考えようとの狙いもあって、厳寒の港町が会場に選ばれたのだという。
大恐慌以来の危機を境に激変した世界の経済・金融情勢。昨年9月の米ピッツバーグG20サミットでは「G20が世界経済を討議する最重要会議」と位置づけられた。G7の影は薄れ、今回は共同声明を12年ぶりに出さないことが決まっていた。
そんなG7の「自分探し」の旅を、世界的な株安連鎖が揺さぶった。発端はポルトガルの国債入札の不調。ギリシャなど財政危機に直面する国々を抱える欧州連合(EU)全体の信認が揺らぎ、ユーロも売られた。
ニューヨーク市場の平均株価が1万ドルを割り、東京市場でも株安が進んだ。バブルを懸念する中国当局による金融引き締め観測、先に米オバマ政権が発表した金融規制強化の影響への懸念などが、連鎖に拍車をかけた。ここには今後の世界経済を左右する問題が幾つも絡み合っている。
だが、G7閉会に際しての議長総括に明確なメッセージはなかった。世界経済の回復を支える景気刺激策の続行、財政の持続性への配慮など、これまでの姿勢の確認が目立った。G7そのものは非公式な性格を強めながら続けていくことになった。
この素っ気なさは、G7が直面している壁を示すものだ。議論は濃密かつ率直だったらしい。だが、欧州情勢では、ギリシャなどの財政問題はEUに処理を期待するしかなく、G7で結論めいたことを出すのは難しい。一方、中国問題は当事者がいないため、突っ込んだ議論はできない。
こうした壁は、G7の枠組みが続く限り今後も存在し続ける。そんな制約下で、G20時代にどのような役割を果たすことができるのか。
その答えがすぐに出るわけではない。だが、ひとつの有力な方向性は、危機を再発させない新しい国際金融の秩序作りに向けた貢献ではないか。
米国は、オバマ政権が打ち出した新金融規制案を詳細に説明した。銀行と証券の機能を分け、預金を扱う銀行には危険度の高い金融商品を取引させないことで、危機の再発を防ごうというものだ。これについて制度に差がある欧州や日本も理解を示した。
さらに、金融機関の救済に要した財政支出を金融機関自らに負担させるという点では各国が一致した。
G7は、G5時代から40年近く世界市場と向き合ってきた。為替安定や不均衡是正の協調にとどまらず、将来展望や問題解決の枠組みを提示し、先導的役割を担うことでG20体制の推進力となるよう求めたい。