株式市場が日米欧の財政状態に警鐘を鳴らしている。先週末の米株式市場はダウ工業株30種平均が反発したものの、一時は9800ドル台まで急落する場面もあった。
株安の背景には、金融危機の対策で各国政府の財政が悪化し、市場が「政府の信用リスク」を警戒しはじめたことがある。各国が景気をにらみつつ、財政再建を進めることが、株式市場の安定にも欠かせない。
株安が連鎖したきっかけは、不調に終わった3日のポルトガル国債の入札だ。市場の不信感は、ポルトガル以上に財政が不安視されていたギリシャに飛び火した。投資家がリスク回避の動きを強め、欧州全域で株式の売却を急いだ。
日米も、株安の連鎖に巻き込まれやすい構造的な弱さを抱える。
今月初めにオバマ米大統領は2011年度の予算教書を発表し、財政赤字は3年続けて1兆ドルを超える見通しとなった。米格付け会社は、財政再建を進めなければ、米国債が中期的に最上格のトリプルAを失う可能性を指摘している。
「プレッシャーにさらされる国家信用」。国際通貨基金(IMF)は1月の国際金融安定性報告書で、こんな項目を設け、財政の持続可能性が懸念される国の1つとして、日本を名指しにしている。
金融の引き締めに動いている中国の株価は、先進国に先駆けて下落基調をたどっている。さらに、金融機関に過度の投機を禁ずる米国の新規制案も、議論の行方によっては、新興国を含めた世界市場で信用収縮を起こしかねない。過剰流動性に支えられた新興国の市場に、株安の歯止め役は期待しにくくなった。
幸いにして、日米欧の企業決算は総じて好調だ。新製品の投入やリストラが奏功し、業績や財務の不安は薄らいでいる。危機から脱しようとする企業努力に「政府リスク」に端を発する株安が、水を差すようなことを繰り返してはなるまい。
カナダのイカルイトで開かれた7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議でも、ギリシャの財政問題への支援が議論された。国際協調が進めば、投資マネーは動きやすい。しかし、市場はギリシャだけでなく、日米にも常に厳しい目を向けている。