HTTP/1.0 200 OK Age: 1 Accept-Ranges: bytes Date: Sat, 06 Feb 2010 22:21:36 GMT Content-Length: 7625 Content-Type: text/html Connection: keep-alive Proxy-Connection: keep-alive Server: Zeus/4.3 Last-Modified: Sat, 06 Feb 2010 13:50:47 GMT NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋−日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

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春秋(2/7)

 能楽や日本舞踊で使うような大きな扇をパラパラと開いたかと思うと、耳のあたりに押し当てて、ひとりで大声で話している人がいた。扇に見えたのは、携帯電話に取り付けた金属製の道具である。はた目には少々こっけいな姿だった。

▼金属の扇で自分の頭を携帯から遮断して、脳を電磁波から守っていたらしい。携帯の利用が急に増えた15年前には、こんな奇妙な道具が世界のあちこちで売られていた。新しい技術が世に登場すると様々な反応が起きるのが常である。だが人を乗せて走る自動車となれば、一時の消費者の戸惑いで済む話ではない。

▼ハイブリッド車「プリウス」などの品質問題でトヨタ自動車が批判にさらされている。米国の閣僚が名指しで批判し、社長が記者会見で世界に頭を下げた。新技術だからブレーキの感触や利き方が違うという説明に安心する人が、どれほどいるか。火がついた不安は、高い技術力だけでは消し去ることはできない。

▼小学生に「カローラって何?」と聞かれて驚いたことがある。小説の中で初めて名前を知ったらしい。その子供も街でプリウスを見かけると、指をさして声を上げる。ハイブリッド車に未来社会を感じるからだろう。新技術は人の心をときめかせるが、時には恐れも抱かせる。そのふたつの顔を忘れてはなるまい。

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