HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 06 Feb 2010 01:15:15 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:朝青龍引退 この衝撃をどう生かす:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

朝青龍引退 この衝撃をどう生かす

2010年2月6日

 なんともむなしい結末だ。数々の勝利と数々の不祥事を残して土俵を去る横綱朝青龍。こんな事態を招いてしまった責任の重さを、相撲界は真正面から受け止めなければならない。

 朝青龍がついに引退した。先月の初場所でも優勝したばかりの横綱である。が、この退場は当然のことと言わねばならない。

 モンゴルから来日して大相撲入りし、横綱となって七年。幕内優勝は歴代三位の二十五回を数えている。近年の大相撲の屋台骨を支えてきた存在であるのは間違いない。ただ、その抜きんでた成績の裏には、功績をそっくり打ち消してしまうほどの問題行動がいつもつきまとっていた。

 故障を理由に巡業を休場しながら、モンゴルでサッカーをしていた件で出場停止となったのをはじめ、再三ルール違反を犯して処分を受けている。一方、土俵上では危険なだめ押しや、相手をにらみつけて小競り合いになりかけるなどの、マナーやスポーツマンシップに著しく欠ける行動が目立っていた。「勝てばいい」「強ければいい」と言いたげな傍若無人。全力士の手本である横綱として、また伝統文化の担い手としてふさわしくないのは明らかだった。

 そして今回の暴行問題。詳細はともかく、力士が一般人を相手に暴行騒ぎを引き起こすなど、絶対にあってはならない。大相撲は国民の貴重な財産でもある。その象徴がこれでは、相撲そのもののイメージが限りなく下落していくばかりだ。退場は当然で、むしろ遅すぎたとさえ言える。

 日本相撲協会が再三処分を科しても何も変わらなかったのは、看板力士ゆえに、協会執行部が真に厳しい姿勢を示さなかったためだろう。「強くて人気があるから」と問題横綱を事実上放任して、大相撲そのものの信用失墜を招いた責任はきわめて重い。国民の財産である大相撲の担い手、守り手として、まったくその任を果たしていないと言うしかない。

 朝青龍個人の問題として終わらせてはならない。大本には相撲界全体の乱れ、劣化がある。大相撲が本来あるべき姿とは。その真の魅力とは。力士育成の精神とは。協会執行部をはじめとする関係者は、猛省とともに原点に立ち返るべきだ。

 看板横綱が土俵を追われた衝撃を今後にどう生かすのか。何も変わらなければ、今度は大相撲そのものがファンから退場を告げられることとなる。

 

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