節分のきのうは、平日にもかかわらず東京都内にある寄席はどこも大にぎわいだった。お目当ては「豆まき」。出演者が寄席の招待券が当たる豆の袋や落語家の手ぬぐいを客席にたくさん投げ入れる▼決まりは「鬼は外」と言わないこと。寄席に来てくれたお客さんに、これからも来てもらえるようにと「福は内」とだけ唱和する。見事にキャッチしたお客さんは大喜びだった▼伝統を重んじる落語界にも「一門」はあるが、大相撲の一門には「鉄の掟(おきて)」があるらしい。日本相撲協会の役員改選で、立浪一門に籍を置きながら元横綱の貴乃花親方に一票を投じた安治川親方(元幕内光法)は「一門に迷惑を掛けた」と一度は退職の意向を明らかにした▼最高位は前頭9枚目。よほどの相撲ファンでなければ、しこ名と顔は一致しないだろう。無名に近い一人の親方の決断が、改革意識の乏しい角界を揺さぶったのは間違いない▼慰留を受け、退職の意向はきのう撤回したが「一門を超えて支持した気持ちは変わらない」と語っている。同世代の貴乃花親方の勇気に感動し、人生をかけて投じた一票には悔いはないはずだ▼きょうは立春。日もだいぶ長くなり、春の訪れを感じるようになってきた。改革の芽をつぶすことに躍起になり、横綱朝青龍関の度重なる不祥事には目をふさいだままの相撲界。春はいつ訪れるのだろうか。