昨年末に石川知裕衆院議員を任意聴取して以来、国民注視の中で進んだ「陸山会」の政治資金規正法違反事件捜査が決着した。検察当局は、小沢一郎・民主党幹事長を不起訴にした判断を中心に、国民に真率な説明をするべきだ。
小沢氏の政治資金を巡る検察の捜査は、昨年3月、西松建設の巨額献金事件で公設第1秘書を逮捕して表に出た。昨年12月に始まった秘書の公判で、検察は、小沢氏側のゼネコンからのカネの集め方と金額の大きさ、そしてそれを隠す処理の仕方に「重大、悪質な規正法違反がある」と主張している。
今回の「陸山会」の土地購入にまつわる収支報告書への虚偽記入も、西松事件と同様の「悪質なカネを隠す重大な違反」だった疑いをもって小沢氏本人に共犯の嫌疑をかけ、事情聴取をしたとみられる。
普通の国民の感覚では、秘書が政治家本人の関与なしに、そんな重大・悪質な違法行為という危ない橋を渡るとは考えられない。検察が収集した証拠はどんなもので、それらをどう価値判断して嫌疑をかけ、結局証拠不十分との結論に達したのか。ぜひとも知りたいところだ。
1年近く続いた小沢氏側への捜査が、小沢氏本人には問うべき刑事責任はなかったとの結果になったことで、検察は、さまざまな方向から疑念を抱かれよう。
「小沢氏や民主党を標的にした恣意(しい)的な、無理筋の捜査だった」と考える人もいるだろうし、逆に「政権党の最大実力者なので、圧力がかかった。あるいは追及の手が鈍った」と思う人もあろう。「捜査を尽くしていない。捜査力が足りなかった」との見方もありうる。
国民の信頼の源泉である「厳正公平」「不偏不党」の姿勢を示すためにも、そうした疑念をはらす努力が検察には要る。
ところが、西松事件でも小沢氏側の悪質さを言うだけで、献金を受けた他の政治家関係者を正式起訴しなかった判断根拠は明かしていない。「規正法は、政治とカネの問題を国民の不断の監視と批判の下に置くのが目的」。そう検察は指摘してきた。政治とカネの捜査もまた、国民の監視と批判の下にあるべきだ。