会社更生法の適用で再建を目指す日本航空(JAL)の新経営体制が発足した。稲盛和夫会長は「再建は十分に可能」と強調するが意識改革を含め厳しいリストラを実行しなければ再建は難しい。
一日付で就任した稲盛会長は「全社員と一緒になって早期に再生させる」と決意を語った。大西賢氏は初の整備畑出身の社長である。「安全あっての航空会社」という大原則をあらためて社内に徹底してほしい。
当面の焦点は六月末までに裁判所に提出する更生計画の策定だ。方向は日航と支援機構による「再生計画」が示している。
再建期間は二〇一二年度までの三年。グループ全体で約一万五千七百人削減、不採算な国際・国内線合計三十一路線を廃止、百十の子会社を半減させ、航空機材も刷新してジャンボ機は五年後にゼロにする−などが概要である。
公的資金を活用した再建を進めて一一年度に営業黒字に転換し、一二年度には九百億円強の営業利益を確保する。企業体質を強化してV字形回復を目指すものだ。
更生計画は甘さが見えるリストラ策を強化し、具体化させることが焦点だ。当然、強力な経営体制とリーダーシップが不可欠になる。高齢で航空業界には不慣れな稲盛会長を、大西社長らはしっかりと支えなければならない。
最大の難関は人員削減だろう。安全運航を維持しながら人員削減を進めることは、かなりの難しさがある。また過去の労務政策の失敗から労働組合が八つある。組合の抵抗は必然だが、真剣な協議を通じて理解を得ることだ。
国際線をどこまで維持するかは日航の将来を左右する。政府部内には全日本空輸(ANA)の国際線部門と統合し、国際線一社体制を示唆する声がある。稲盛会長は「国際線のない日航はイメージがわかない」と語るが、重点をどこに置くのか決断が必要だ。
近く決定する予定の米デルタ航空あるいはアメリカン航空との提携も、日航の再建と密接に絡む。これは独占禁止法の適用除外問題が関係するから、政府関係者などと事前調整が重要である。
日航は、一民間企業を国が救済することに疑問を持つ国民が多いことを忘れてはならない。公的支援を受けている同社が航空券の安売りをするのは公平さを欠く−と反発する声があるのも当然だ。
親方日の丸意識と薄いコスト意識を是正し、謙虚で私心を捨てた経営が何よりも望まれる。
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