バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が米議会で再任され、2月から2期目が始まった。リーマン・ショック後の金融危機を鎮めるのが1期目の最大の仕事だった。
政策金利はしばらく事実上のゼロ%を継続するが、緩めすぎの副作用についての議論も始めた。うまく平時に戻せるかが2期目の課題だ。
FRBは危機に対応して導入した各種の資金供給策の大半を2月1日でやめた。日欧など海外の中央銀行へのドル資金融通といった策は必要性が薄れたと判断したからだ。
住宅市場てこ入れを狙った非常策である住宅ローン担保証券や住宅金融会社債の買い取りは、3月末に期限を迎える。この措置についても、「予定通り完了すると予想している」とFRBは表明している。
バブルの崩壊は家計や企業のバランスシート(貸借対照表)を傷つける。その傷が修復しないうちに、かつての日本のように財政や金融の引き締めに動けば、経済は失速しかねない。バーナンキ議長はその辺の事情を念頭に置きつつ、景気回復に合わせ徐々に軌道修正を図っている。
問題は米国の財政赤字に削減のメドが立ちにくく、非常時からの出口にほど遠い点だ。オバマ大統領は2011年度(10年10月〜11年9月)の予算教書を発表したが、財政赤字は3年連続で1兆ドルを突破する。
国債市場のてこ入れとみられるのを避けようと、FRBはすでに昨年10月に長期国債の買い取りをやめている。とはいえ、財政の立て直しが難しいなかでは、景気の足を引っ張るような金融の引き締めには慎重にならざるを得ない。
金融を緩めているうちに、かつてと違う市場でバブルが生じ始めたことも見逃せない。米国では銀行貸し出しが減少傾向だが、その一方で低利のドル資金を借り、商品や新興国通貨に投資する「ドル・キャリー(借り入れ)」取引は膨らんでいる。
中国などアジア諸国にそうした資金が流れ込み、不動産市場を過熱させている。中国は銀行の預金準備率を引き上げ、貸出増加額を規制するなど、ブレーキを踏みつつある。米国が金融の蛇口を開いたままでは、米国発のマネーが流れ込む構図は変わらない。ここが悩ましい。