鳩山由紀夫首相の施政方針演説に対する代表質問が始まった。谷垣禎一自民党総裁は鳩山政権を「小沢独裁」と攻め立てたが、期待された「国のかたち」をめぐる論戦がかすんだことは否めない。
「鳩山総理、あなたは本当にこの国の為政者であり、最高意思決定権者なのでしょうか」
谷垣氏は冒頭こう問い掛け「『小沢独裁』に堕した鳩山政権には、もはや民意に支持された政権としての正統性は失われている」と内閣総辞職か衆院解散を迫った。
谷垣氏が「小沢独裁」の例として挙げたのは、「政治とカネ」の問題を抱える小沢氏に、鳩山首相や民主党議員が「ものも言えない状況」だったり、予算・税制が「小沢氏のさじ加減一つで決められた」ことなどだ。
谷垣氏は先月下旬の党大会で「日本の民主主義のために『小沢独裁』と戦わなければなりません」と宣言しており、代表質問も、その延長線上なのだろう。
しかし、首相と野党第一党党首との論戦の中心が「小沢独裁」では物足りない。
党首同士の論戦の醍醐味(だいごみ)は、「国のかたち」ともいえる政府のあり方をめぐる骨太の議論だ。
首相は、人々が支え合うことで地域の絆(きずな)を再生する「新しい公共」という概念を提示しているが、代表質問では「小沢独裁」の陰に隠れ、議論にすらならなかった。
野党が、政府・与党の弱点を突くのは当然だ。執拗(しつよう)な攻撃も、追及の手ぬるさが「与党ぼけ」と批判された自民党の総裁としてはやむを得ない。夏の参院選に党の存亡がかかるとしたらなおさらだ。
鳩山首相は「(小沢氏は)党代表の信任と委託に基づいてその職務に当たっており、党や政府を支配するなどということは一切ない」と独裁を否定したが、谷垣氏にそのような質問を許す状況の解消に努めることが先決だ。
自身の偽装献金事件はもちろん、小沢氏の資金管理団体をめぐる政治資金規正法違反事件についても、真相解明と説明を尽くすよう、民主党代表として強い指導力を発揮する必要がある。
政策決定でも、二元化批判を受けないよう内閣主導の維持に努めることは言うまでもない。
与野党は二月中に党首討論を開くことを合意している。そのときには「国のかたち」をめぐる骨太の議論を戦わせてほしい。
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