HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 31 Jan 2010 23:15:19 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:税制論議 成長し支え合う知恵を:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

税制論議 成長し支え合う知恵を

2010年2月1日

 政府税制調査会が有識者で構成する専門家委員会を新設し、近く初会合を開く。中長期を見据えた税制改革の助言が役割だ。成長を促し、国民生活を安定させる税制再構築の道筋を示してほしい。

 昨年末の二〇一〇年度税制改正は、ガソリン暫定税率廃止の断念など財源不足で迷走し、肝心の税制手直しの議論を素通りした。鳩山政権発足から三カ月、時間的制約はあったにせよ各省大臣や副大臣らで組織する政治主導の政府税調は税に精通する議員が少なく、専門的な論議に踏み込めない。その泣きどころをさらけ出したと言うべきだろう。

 そこで新設されたのが専門家委だ。再分配を重視する神野直彦関西学院大学教授を委員長に、社会保障、環境などにも詳しい有識者らが多角的に議論する。

 今や中国などから低賃金で生産された日用品が軽々と日本の国境を越えてくる。日本の賃金もそこにさや寄せされ、年収二百万円以下の勤労者が一千万人を超えた。

 低所得の家庭に生まれたがゆえに教育機会に恵まれない−では社会の潜在能力が低下し、税や社会保障の担い手も細る。納税者が「支え合い」の理念を広く共有し所得再分配と向き合う時代が到来したと受け止めるべきだろう。

 専門家委は減税の恩恵が少ない低所得者層に手当を支給する「給付付き税額控除」や、課税の公平性を保つため国民の所得を把握する「納税者番号制」の導入などを柱に議論を進める予定とされる。

 給付付き税額控除は再分配の一手法だが、所得を正確につかむ納税者番号なしには給付対象の認定が混乱する。個人情報に配慮しつつ積極的な取り組みを求めたい。

 再分配制度は財源を確保してこそ機能する。高所得者ほど負担を増やす所得税累進構造の強化などに加え、鳩山政権が四年間は上げないと表明した消費税率についても議論を封じるべきではない。

 金融危機を境に企業からの税収が激減し借金は増える一方にある。経済のパイを大きくし、税収を増やす手だても検討すべきだ。

 〇九年度改正では海外に進出した子会社からの配当金を原則非課税にし、国内投資に誘導して雇用を生み出す環境を整えた。専門家委はそうした手法を幅広く取り入れ、日本企業はもちろん、外国企業の対日投資も促す税制を心がけてもらいたい。

 「国民生活第一」の実現には、成長力を回復させて国民を安心させる税制の知恵が不可欠だ。

 

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