HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 31 Jan 2010 20:15:19 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:週のはじめに考える 自民版 自分探しの旅:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

週のはじめに考える 自民版 自分探しの旅

2010年1月31日

 歴史的な政権交代明くる年の一月が過ぎていきます。先行き視界不良のまま。で、野にある自民党に題材を求めます。政治状況の今が見えるかも、と。

 これが数の威力でしょうか。鳩山政権の土台はやたら危なっかしいのに、国会が与党の描くシナリオ通りにスイスイです。

 二〇〇九年度補正予算が難なく成立し、一昨日は首相の施政方針演説。明日から各党の代表質問、続く一〇年度予算案の審議入り日程までも合意済みのようで…。

 自民の出番らしい出番がない。政権追及の布石に従来野党が駆使した遅延戦術をとろうにも、状況が許さなかったのでしょう。

◆反攻へ四文字

 野党当時の民主党のまね事はしないというのは恐らく建前。経済の二番底危機も心配される折、ごねていると受け取られては世間が怖い。連立相手だった公明党にも袖にされては完全孤立です。

 よほどの局面でなければ審議拒否など党利党略だと侮られる、そういう時代になっています。

 そこでいよいよ迎える本格攻防の二月。反攻作戦はいかに−。

 先週の党大会に表れたキーワードの一つが「小沢独裁」。日本の民主主義のために、鳩山政権を支配する小沢一郎民主党幹事長の強権政治と闘うんだ、との文脈で首脳たちが口にします。

 小沢氏が党の人事とお金を握り、地方や業界の予算陳情受け付けを一元化したこと、内閣の政策を“鶴の一声”で方向付けしたことなどを指しているらしい。

 政治資金規正法違反事件の関係者として小沢氏が検察捜査の対象になったことも、もちろん織り込んで、政権打倒への最大の狙い目とするのは、よくわかります。

 ゼネコンとの深いつながりが怪しまれている最高実力者に何も言えない政権与党をたたくのは、野党なら当たり前ですから。

◆谷垣演説の妙

 ただ、指摘しておきたいことを一つ二つ。政権党の幹事長に選挙の公認や資金差配の権限が集中するのは小選挙区制度の故ではありませんか。制度導入に際して、歯止めなき危険が指摘されていたのに、放置したのは一体だれ?

 そして小沢氏の性向は自民党政治のそれなのだと、古手の皆さんが実は感じているということ。

 党大会での谷垣禎一総裁の演説が、その意味で評判でした。

 総選挙惨敗の総括で、自民党政治の霞が関官僚依存、政官のなれ合いを自己批判したのに続けて、あからさまにこう語ったのです。

 「政治と業界団体とのもたれ合いの果てに、密室で不当な利権をむさぼっていたのではないかとの認識が、世にまん延しました」

 「一部の人間が利益を分配し、内輪の権力闘争に明け暮れる、もはや、そんな自民党とは、きっぱりと決別します」

 しがらみを絶ち、体質を徹底改造するという決意表明でした。その言や良し。問題はその先。足を地につけてやれるか、です。

 現有議員の激減で政党助成金が三十六億円も減るらしい。業界団体の自民離れが甚だしく、頼みの日本経団連も距離を取る。資金の枯渇を憂う声が飛び交います。

 どうせ集まらないのなら企業献金は禁止すればいい。少なくとも公共事業受注企業のカネは受けない、と。「政治とカネ」に苦慮する民主に先んじてです。

 お金の次は人。しがらみのない志高き人材を発掘する好機でしょう。民主現職の占める選挙区は十分すぎるほどあるのですから。

 党のセールスへ元首相の子息を頼んだり、参院選の集票に美人市議を画策する発想は、総選挙にタレント知事の擁立を試みた茶番と変わりません。

 公明の自民離れが取りざたされます。業界団体と同様に与党志向が鮮明になるとしたら、選挙協力を期待するのは難しい。

 かねて票や選挙の手足を公明支持団体に頼った結果、自民の根っこは衰弱が著しいのです。

 つまり、自ら新たな地盤を開拓するか、あるいは民主へ流れた票を取り戻すしかありません。

 もう一度、地域から絆(きずな)を、と谷垣氏は呼び掛けます。お尋ねします。沖縄の米軍飛行場の移転先。地域の声、民意にどう向き合いますか。市長選結果は斟酌(しんしゃく)しない、という内閣官房長官発言を是としますか、非としますか。

 自民の「自分探し」が始まっています。新綱領の言う「進歩を目指す保守」では意味不明。鮮やかな体質転換を見せてください。

◆政権の受け皿

 自分探しの旅は三年、もしかしたらそれ以上になるかも。耐えられなければ分解です。ばらけて出直すのも一策ですが、それでは民主の一党独裁。よろしくない。

 今の政権に国民が絶望するなら受け皿は強い野党です。その器の“保守”は、どうか怠りなく。

 

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