「タリバン穏健派と和解し、国を再統一する」。アフガニスタン支援会議で、カルザイ大統領は自国主導での再建策を示した。兵士の社会復帰には日本の拠出金が使われる。ぜひ成功してほしい。
ロンドンの会議には約七十カ国が集まり、支援策を決めた。
その柱の一つが、イスラム原理主義勢力タリバンの兵士らに離脱を促し、職業訓練して社会復帰させる基金の創設である。日本と英国が中心となり、基金に必要な一億四千万ドル(約百二十六億円)のうち、日本は三分の一以上となる五千万ドルの拠出を約束した。
インド洋での補給支援活動に代えて鳩山政権が打ち出した五十億ドルの支援の中で、具体的な使い道の公式表明は初めて。アフガンでは国内総生産(GDP)の二割余に匹敵する二十五億ドルがわいろに消えるという調査もあり、人々に確実に届く手段も必要だ。
この基金創設は、カルザイ大統領がかねて求めていた。大統領には、年内にタリバンの穏健派も招く「平和会議」を開いて、自ら国民和解を呼びかける考えもあるという。
それに対応するように、国連は大統領の要請していた元タリバン幹部ら五人について、渡航禁止や資産凍結の対象とするテロリストの制裁リストから外している。国連のアフガン特別代表が秘密裏に今月上旬、ドバイで穏健派と接触したとの報道もある。
これまでの戦闘一辺倒による解決から、同じアフガン人同士として対話で和解を探る解決へと動きだしている。大きな方針転換であり「出口」を探る米国も表面には出ずに後押ししているようだ。
国際テロ組織アルカイダをかくまったタリバン政権が米軍などの攻撃で崩壊してから八年。国連によると、戦闘に巻き込まれ亡くなった民間人は昨年一年間で二千四百十二人にものぼり、開戦後最悪になった。うち約15%が空爆被害とされ、いくら治安が外国頼みの国民でも、外国軍隊に怒りを向けるのは当然だ。
米国は三万人増派予定の一方、来年夏から撤退開始の意向だ。他国も自軍の撤退を望んでおり、会議は年内にも治安権限の移譲を始めると決めた。
アフガンが自立せねばならぬ時は近づいている。国軍や警察の強化も急がねばならない。そのためにはアフガンの自主自立を見据えた支援へ、国際社会の関与の仕方も変わっていくべきだ。
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