世界の自動車販売にやや明るい兆しが出てきた中で、最大手のトヨタ自動車が最も得意とするはずの品質・安全問題で揺れている。
米国で販売したクルマに、アクセルペダルの不具合が見つかり、約230万台の大型リコール(回収・無償修理)に踏み切った。
当該の8車種には「カムリ」や「カローラ」といった代表的なクルマが含まれ、改良の準備が整うまで8車種の生産・販売を米市場で一時的に停止することも発表した。
欧州や中国など米国外でも最大200万台規模のリコールが必要になる可能性もある。
さらに、これとは別に、昨年の夏以来、米国で問題となっているフロアマット関連でも改修措置の対象車を広げると発表し、対象車は530万台まで拡大した。
アクセルペダルとフロアマットの対象車は一部重複しているが、世界全体で600万台を超えるクルマが改修対象となる見通しだ。
問題が拡大した一つの背景は、近年進んだ部品の共通化だ。車種が違っても共通部品の比率を増やせば、コスト低減につながるが、一方で部品に欠陥があれば、改修対象のクルマの台数は膨れあがる。
現地生産や現地調達の拡大も事業のグローバル化を進めるうえで不可欠のテーマだが、従来つきあいのなかった部品会社との取引が増えれば、品質管理の難しさも増す。
部品共通化や現地化は世界的な流れであるだけに、他の自動車会社にとっても十分な注意が必要だ。
トヨタをはじめとする日本車が世界で躍進した背景には、品質への信頼が大きかった。だが、近年は米国車や韓国車なども品質向上が進み、優位性が縮小しているのが実態だ。
品質・安全問題がいたずらに長期化すれば、それだけブランドイメージも損なわれる。
市民の安全を守るために、欠陥ゼロのクルマを目指すのは当然だが、仮に欠陥車を出してしまった場合は、徹底した対策をとって不安を一日も早く解消することが大切だ。
メーカーにとって基本中の基本である安全・品質問題で信頼を取り戻すことが、トヨタ復活への欠かせない第一歩である。