日本国債の格付けが引き下げられる見通しになった。財政赤字が拡大しているうえ、景気停滞も長引きそうなためだ。鳩山由紀夫政権は信頼できる財政再建への道筋を早急に示さねばならない。
米国の格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は日本の長期国債の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。今後の景気や財政運営次第で、現在の「AA」ランクから一段階低い「AAマイナス」に引き下げられる可能性が出てきた。
先の金融危機で証券化商品の危うさを正しく評価できなかったために、格付け会社自体も信頼度が揺らいでいるとはいえ、日本国債の評価を下げたのはもっともな面がある。相次ぐ景気対策と政権交代に伴う政策路線変更を受けて国債増発が続いているからだ。
国会で審議される二〇一〇年度政府予算案では、三七・四兆円の税収に対し国債発行額は四四・三兆円に上る。戦後の混乱期を除けば当初予算段階から国債発行額が税収を上回ったのは初めてだ。
この結果、政策的経費をその年の税収などで賄えているかどうかを示す基礎的財政収支は二三・七兆円の赤字と過去最大規模に膨れ上がってしまった。
放置すれば長期金利はやがて上昇する。そうなれば設備投資を冷やし景気低迷を長引かせるだけでなく、住宅ローン金利にも跳ね返って家計や暮らしを直撃する。
今回の国債格下げ見通しは、そんな暗いシナリオが現実味を帯びてきたという「市場からの警告」と受け止めるべきだ。
だからといって、直ちに増税を目指す安易な議論にも乗れない。政権交代によって積もり積もった無駄や非効率の大掃除に手が付いたばかりだ。政府の埋蔵金が示すように、独立行政法人を含めた公的部門には、まだまだ無駄や遊休資産が残っている。
まずは公的部門のリストラと効率化が不可欠である。官僚の天下り問題と裏腹にある無駄遣いを改めないまま、国民負担を増やす施策は受け入れられない。
一方で、財政再建の議論も急ぐべきだ。従来は一月中に経済財政の中期展望をまとめていた。政権交代という事情を考慮しても、中期財政フレームを六月に出す方針はいささか悠長ではないか。
国民につらい話が含まれるとしても、財政再建への考え方と道筋をどう示すか。鳩山政権の信頼度はそこでも試されている。
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