いまから二十二年前の新人記者時代、初めて書いた夕刊社会面トップの記事は、東京・有楽町のマリオンのビルにトンビが激突、救助されたという歳末のほのぼのとした街ダネだった▼警察回り時代のスクラップ帳を繰ってみると、見出しが時代を映している。「マリオン」という文字の下に「あの『西武』入居」。西武有楽町店が一九八四年に開業してから三年後の出来事だった▼セゾングループの新しい情報発信の拠点として、若い女性向けのファッションや生活雑貨をそろえ、銀座の老舗百貨店と対抗。「銀座の人の流れが変わった」と言われるほど話題になっていた▼「あの」と特筆されるほど輝きを放っていた西武有楽町店が、今年十二月末に閉鎖されることになった。時代の流れとはいえ、全盛期を知る一人としては寂しいニュースだ▼そごうと西武百貨店は二〇〇六年に、セブン&アイ・ホールディングスに買収され傘下に入ったが、ユニクロなど低価格で品質のよいカジュアル衣料品専門店が台頭し、高級品をそろえた百貨店の顧客離れは加速する一方だった▼あのトンビは、預けられたペットショップで元気になり、一週間後に大井ふ頭の野鳥公園で自然に戻った。両翼一・七メートルもある翼を広げ、バサッバサッと青空の中に消えた。デパートが元気を回復し、再び空高く舞い上がる時代が来るのだろうか。