HTTP/1.0 200 OK Age: 326 Accept-Ranges: bytes Date: Fri, 29 Jan 2010 00:15:45 GMT Content-Length: 7649 Content-Type: text/html Connection: keep-alive Proxy-Connection: keep-alive Server: Zeus/4.3 Last-Modified: Thu, 28 Jan 2010 14:25:22 GMT NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋−日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

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春秋(1/29)

 1097件という数字を、先日の紙面で知った。昨年1年間に全国で発生した、未遂を含めた殺人事件の警察庁統計である。およそ殺人という犯罪は昭和30年代からほぼ一貫して減り続けていて、昨年は戦後最少を更新したのだという。

▼治安が悪くなったと感じていても、こんな統計に接すればやはりニッポンは安全な国だと思い至る。ただ、背景にはなかなか複雑な事情が潜んでいるようだ。昔に比べて人間関係が希薄になり、他人との摩擦が減ったと説く専門家もいる。自己完結しがちなネット社会が、この傾向を強めているという指摘もある。

▼東京・秋葉原で起きた無差別殺傷事件の初公判で、きのう検察側は凶行に突き進む被告の心の動きを詳述した。深い人づきあいもなく、ネット掲示板への書き込みを日々の救いにしていた被告。ところが、そこでも相手にされなくなったと思い込み、社会への復讐(ふくしゅう)に及んだ。「大きな事件」を起こしてやろう――。

▼殺人事件を減らしているのかもしれない淡い人間関係が、そして孤独や孤立が、ときには暴発してこれほどの狂気につながるのだろうか。身勝手極まりない無差別殺傷の「動機」だが、それを生んだ世の中を思ってまた慄然(りつぜん)とする。近年の殺人発生件数は最多期の約3分の1。あらわれた数字の、裏側が見えない。

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