内外の経済環境に不透明さが漂うなか、日銀は年初の金融政策決定会合では、ひとまず政策を動かさなかった。昨年10月に経済と物価の「展望リポート」で示した経済成長率の見通しを保つ一方、物価の下落幅がやや縮まる筋書きに改めた。
白川方明総裁は「2010年度前半に景気の勢いは若干弱まるが、回復基調が途切れることはない」と景気二番底の懸念を否定した。中国を筆頭に新興国の経済成長が予想以上に強いのが支えで、それが原油高などの要因にもなっているという。
政策委員による消費者物価の予測の中心値は10年度で前年度比マイナス0.5%、11年度が同0.2%。昨年10月時点に比べてそれぞれ0.3ポイント、0.2ポイントの上方修正をした。
それでも、日銀自身が「許容しない」と明言した物価のマイナス傾向が、今後2年は続くことに変わりはない。物価が下げ続けるデフレの長期化は企業や家計を萎縮させ、日本経済に重圧となる。日銀と政府はデフレ阻止という目標を共有し、「賢い連携」を行動に移す必要がある。
日銀は12月に、政府の経済対策と足並みをそろえ、3カ月物の資金を0.1%の固定金利で供給する追加緩和に踏み切った。物価安定の定義も明確にしてデフレ阻止の決意を示した。白川総裁は一連の措置でやや長めの期間の市場金利が低下し、円高と株安、企業心理の悪化に一応の歯止めがかかったと評価した。
一定の前進だが、これで十分とはいえない。足元の国内景気は自律回復にはほど遠い。外需に依存するなか、海外でも中国経済の過熱感、一部欧州諸国の信用不安、米オバマ政権の金融規制案に伴う株価下落といった波乱要因が目白押しだ。日銀も一連の懸念材料を直視している。
金融危機後の財政出動の余波で、政府の信用(ソブリンリスク)への懸念が金融市場で強まっている。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは財政悪化とデフレ圧力を理由に日本の長期政府債務の格付け見通しを悪化方向へと変更した。
デフレの克服が重要な課題となるなか、政府が財政の有効活用を明確にすると同時に、日銀が国債買い切りの積み増しで応える。そんな連携策も視野に入れる時期にきている。