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お正月の福袋売り場の熱気は記憶に新しい。どのデパートも押し合いへし合いの盛況になった。だがコラムニスト天野祐吉さんの筆は辛い。「福袋が売れるんじゃない、福袋しか売れないのだ」という知人の言を、小紙連載の「CM天気図」に書いていた▼「福袋を買うのはモノを買うのではない。福袋を買うというコトを買うのだ」という天野さんの目も鋭い。福袋の季節にだけ、デパートはかつての祝祭的な空気を取り戻すようだ▼デフレの下、百貨店業界を覆う雪景色はきびしい。怒濤(どとう)のような安値の商品に押され、去年の売り上げは24年ぶりの低さに沈んだ。閉店の動きが各地で相次ぐ。東京の銀座でも、名所の有楽町マリオンから西武有楽町店が消えることになった▼フランク永井の低音で「有楽町で逢(あ)いましょう」が流行(はや)ったのは53年前になる。開店したそごう東京店のイメージソングだった。時代は変わり、その建物にいまは家電量販店が入る。歌の碑が一昨年、マリオンの前に設けられた▼買い物は、ただカネとモノの交換ではあるまい。期待と満足。包みを抱えて帰る喜び。作る人売る人との縁……。思えば豊かな行為である。なのに昨今、そのふくらみが細ってしまった寂しさがある▼〈デパートに百円ショップ出店せりやがてデパートもここで売られむ〉栗木京子。作った人の生活が立ちゆくのか、心配になるほどの安値でモノが売られている。買う方とて、その安さの先に希望は見つけにくい。社会も暮らしもちぢこまっていく体感が冬の列島を締めつける。