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1月27日付 編集手帳

 ルノワールと聞いて、()()色の(ほお)をした可憐(かれん)な少女を思い浮かべる人も多かろう。生命力あふれる肖像画によって「幸福の画家」と呼ばれるその人も、当初の評判は散々で、光の点々を描く技法は“腐乱死体”との悪評を浴びたという◆〈モデルたちでさえ、ルノワールに描かれるのを嫌がったので、彼は自分の家の家政婦をモデルにしなければならなかった〉。美術評論家の高階(たかしな)(しゅう)()さんが著書「近代美術の巨匠たち」(岩波現代文庫)に書いている◆新しいことを始める人に受難はつきもの、印象派の巨匠も例外ではなかったらしい◆『団扇(うちわ)を持つ若い女』『アンリオ夫人』など国内外の主要コレクション77点を集め、画業と技法を振り返る「ルノワール―伝統と革新」展が東京・六本木の国立新美術館で開催されている。うっとうしい世相をしばし離れ、ルノワールならではの、一枚一枚の絵が放つ暖かな春の空気に触れるのもよろしかろう◆愛らしい少女や美しいご婦人に別れを告げて外に出ると、風は身を切るように冷たい。〈ルノアルの女に毛糸編ませたし〉。俳人、阿波野(あわの)青畝(せいほ)の句に、ひとりうなずく。

2010年1月27日01時25分  読売新聞)
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