新婚時代はアパートで暮らして子どもが生まれたら賃貸マンションへ。その後、分譲マンションを買い、その売却益で郊外の庭付き一戸建てを購入してアガリ。かつて会社員の人生設計の目安としてこんな「住宅すごろく」が語られた。
▼一億総中流といわれ、土地も給料も右肩上がりが続いた時代の話だ。昨今のご時世ではなかなか難しい。実際、昨年着工した住宅戸数は42年ぶりに100万戸の大台を下回り、最盛期に比べて半分以下になったようだ。靴箱や浴室の鏡のような設備まで省いて格安にしたデフレに対応した物件も続々登場している。
▼日本最初の大規模団地である大阪・千里ニュータウンの全体計画が決まったのは半世紀前の1960年のことだ。都市部の住宅が極端に不足し、同団地は1世帯5人という前提で計画された。今や1世帯の平均人数は全国で約2.4人と半分になり、約5760万戸ある住宅のうち、8戸に1戸は空き家だそうだ。
▼最近の流行は割安な中古物件を買ってリフォームする方式だ。古民家をみてもわかるようにしっかりした住宅は本来、手入れさえすれば長期にわたって住み続けられる。政府も経済対策で住宅版のエコポイント制度を打ち出して後押しする。造っては壊すのではなく暮らし続ける。マイホームの姿も変わり始めた。