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天声人語

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2010年1月26日(火)付

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 記者を続けていると、取材相手のはっとする言葉に出合うことがある。「民主主義はもうこりごりだ」は忘れがたい。コザ市(いまの沖縄市)の元市長で10年ほど前に97歳で亡くなった大山朝常(ちょうじょう)さんが、絞り出すような声で言った▼元教育者だった。沖縄戦で息子2人、娘1人、母と兄を失った。戦後は政治家として「基地はいらない」と訴え続けた。ところが減りもしない。本土による、本土のための民主主義が苦難を島に押しつけている。日本政府への深い失望が、「こりごり」の一語には込められていた▼そんな基地のひとつ普天間飛行場をめぐって、名護市の民意は移設への異議を申し立てた。市長選で、移設に反対する稲嶺進氏が現職を破った。結果は重い。政府が軽んずれば、「本土のための民主主義」が繰り返されることになろう▼心配なのは鳩山首相の腹のすわり具合だ。戻る橋を焼かれたとも言われる。風見鶏を決め込んでいて青くなったかもしれない。いずれにせよ数カ月で政治家としてのすべてが問われよう。もう「宇宙人」を言い訳にはできない▼戦争で壊滅し、戦後は基地の島になった故郷を「不沈母艦」にたとえて悲しんだのは詩人の山之口貘(ばく)だった。その密集ぶりは、米国防総省の元高官に「小さな籠(かご)に、あまりに多くの卵を入れている」と言わせもした▼「日本の安全保障じゃない。本土の安全保障のために基地がある」。そんな大山さんの声も耳の奥に残る。普天間という危うい卵をつまんで立ちつくす首相は、どこの籠に入れる心づもりなのか。

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