HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 24 Jan 2010 02:16:37 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:自由貿易協定 取り込め『アジア内需』:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

自由貿易協定 取り込め『アジア内需』

2010年1月24日

 縮む日本経済をどう再生するか。アジア内需で成長を−との声が高まる一方で、日本はそれを後押しする貿易協定が出遅れている。鳩山政権はヒト、モノなどの行き来を促す手だてを講じるべきだ。

 「韓国に後れを取らぬようアジア内需の拡大に向け自由貿易協定(FTA)に取り組む」。岡田克也外相は日本の劣勢を認め、こう発言した。アジア内需とはアジアを輸出先ではなく内需ととらえ、鉄道や環境技術などを輸出して、デフレや少子高齢化で縮む一方の日本経済を再び成長軌道に乗せようとの発想だ。

 国内総生産(GDP)世界二位の日本に肉薄する中国やインドでは、自動車などの耐久消費財を買い求める中産階級が着実に増えてきた。アジアを内需と見立てるなら、まず関税など国境に横たわる障害物を取り除くべきだ。

 韓国政府は自由貿易推進の司令塔、外交通商省を十年以上前に発足させている。人口は日本の三分の一強、内需頼みには限界があるので外需で成長させる戦略だ。米国、欧州連合(EU)とのFTA交渉も妥結し、EUとの協定は年内に発効する。発効後は韓国向け欧州車が関税引き下げで値下がりし、トヨタ自動車やホンダなど日本勢への打撃は計り知れない。

 中国−東南アジア諸国連合のFTAも今月一日に投資協定などがすべて発効し、域内十九億人の巨大市場が出現した。米オバマ政権もアジアに照準を合わせている。

 それに引き換え日本は貿易額の二割を占める中国、一割超の米、EUとの交渉は予定すらない。日中韓首脳会談で合意した三カ国FTAの共同研究は交渉開始に結びつく気配がない。鳩山由紀夫首相の東アジア共同体構想も、隣国の中韓と協定を結べないようでは実現は遠いと言わざるを得ない。

 世界貿易機関の多国間交渉をはじめ、日本の貿易交渉はことごとく農業問題がネックになる。

 韓国は米韓FTA交渉の際、関税引き下げに反対する農民を財政で支え、半導体など工業製品輸出で富を稼ぎ出す道を選んだ。鳩山政権も「戸別所得補償制度」の活用などで農家に協力を求めるべきだろう。安い輸入農産物と生産費の差額を補填(ほてん)するので痛みを和らげる効果が期待できる。

 政府は六月までに成長戦略の具体策をまとめるという。アジアの需要を広く取り込んで日本経済を復調させるには、国民の理解を得ながら農業政策の転換にも大胆に挑む気概が不可欠だ。

 

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