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1月22日付 編集手帳

 その物語に登場する米国ニューヨーク市の検屍(けんし)局では、大理石の壁にラテン語の言葉が刻まれている。〈死者が生者を助けるこの場所では、会話も笑いも聞かれない〉◆パトリシア・コーンウェルの女性検屍官シリーズの一冊『私刑』(講談社文庫)のなかにある。小説の一節だが、検視(検屍)のもつ重い意味をよく伝えている。検視によって事件が早期の解決をみれば、次の犯罪を未然に防ぐことができる。「死者が生者を助ける」場所である◆欧米に比べて遅れている検視制度を改めるべく、警察庁が近く研究会を発足させるという◆警察が一昨年扱った“異状死”約16万体のうち、検視官が現場に立ち会ったのは14・1%、解剖に付されたのは9・7%にとどまる。解剖せずに「自殺」と判断して犯罪が見逃された事例がなかったかどうか。研究会は検視官や解剖医の増員に向けた具体策などを議論するという◆同シリーズの作品『接触』で、主人公が同僚に嘆く。〈私たちが十分な予算をもらえることは絶対にないわ。死人は投票しないから〉。投票することはなくても、生者を助けてくれる人々である。

2010年1月22日01時15分  読売新聞)
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