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春秋(1/22)

 「書類選考」などというときの「選考」は、本来は「銓衡」と書く。「銓」とは秤(はかり)に使う分銅のことで、片や「衡」は秤ざおを指す漢字だ。つまり、ものごとや人物を秤にかけるようにしてしかと見極めるのが「銓衡」なるものである。

▼それがなぜ「選考」になったか。話は半世紀ほど昔にさかのぼる。当時の国語審議会は、当用漢字は定めたもののリストにない文字を含んだ漢語に手を焼いていた。そこでエイヤっと、同音で似通った意味の漢字への書きかえを求めたのだ。編輯→編集、聯絡→連絡、諒承→了承などなど数え上げればキリがない。

▼常用漢字の見直しを進める文化審議会が、またこの一件で頭を痛めている。「障害」の「害」はイメージが悪い、本来の「障碍」と書けるように「碍」を認めてほしいという声があるからだ。昨今しばしば見受ける「障がい者」より自然かもしれないが、ならば、あれもこれも元に戻せと紛糾のタネが増えそうだ。

▼「障害」と書く表記もじつは戦前からあったというからややこしい。一筋縄ではいかない議論だが、ほんとうに問題なのはその言葉に人がこめる偏見や差別意識に違いない。とはいえ、字面が感情を呼び起こすのも確かだ。ここは選考よりも銓衡が、そして知恵よりももっと深い「智慧」というものが必要だろう。

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