1日に1度、ソウル便が往復するだけで国内線の定期便はひとつも飛ばないという。この春オープンする茨城空港である。旅客のざわめきもなく、売店やレストランは手持ちぶさた……。時間が止まったようなターミナルが目に浮かぶ。
▼ざっと81万人、と見込んでいた年間利用客は絵に描いたモチだった。チャーター便を集めてきてもせいぜい10万人ほどらしい。あとさきを考えぬ空港乱造の見本といったら失礼だろうか。これほどではないにせよ、大赤字に悲鳴をあげる空港や地方路線があちこちにある。政治力による「我田引空」の果てなのだ。
▼日本航空の経営破綻にはあまたの背景があるけれど、こういう航空政策の罪深さも忘れてはなるまい。政と官の有形無形の圧力であの空港この路線への就航を余儀なくされ、まともな規律が働いてこなかった歴史だ。長い間どこでどんな利権が渦巻いていたものか、このさい白日の下にさらしてみたらどうだろう。
▼茨城空港の地元では、見物客を大いに期待しているらしい。賑(にぎ)やかしに足を運ぶのもいいが、何ともアクセスが貧弱だ。専用道を使った直通バス路線も開港には間に合わないというから、霞ケ浦の北の現地にはクルマがなければたどり着くのが難しい。地図を眺めながら、重ねた無理と無駄を思ってため息が出る。