日本航空(JAL)は会社更生法の適用を申請し、事実上倒産した。今後は裁判所の管理下で抜本改革を進め二〇一一年度に黒字転換を目指す。再建は難航必至だけに全社挙げての努力が不可欠だ。
日本最大の航空会社の倒産被害は甚大である。一万社以上の取引先企業や約四十万人の個人株主、金融機関の損失。そして投入した公的資金では早くも国民負担が表面化した。歴代経営者の責任は極めて重い。
更生手続きの開始決定を受けて政府は「支援声明」を出した。また再建を主導する企業再生支援機構は厳しい再建計画を発表した。不採算事業や路線を大胆に廃止・縮小して、一二年度に再建を完了させることが目的である。
グループ全体で一万五千七百人の従業員を削減する。ホテルや旅行業など百十の子会社を売却・統合して五十七社へ半減。同社航空機の象徴だったジャンボ機三十七機を五年後までにゼロにする。
日本政策投資銀行など金融機関の債権放棄額は三千五百億円を超える。支援機構は日航に三千億円を出資する。政府は今後の公的資金投入について、あらためて国民に説明すべきである。
再建計画は外科療法だ。しがらみを断ち切って抜本改革を一気に実施する姿勢は、評価できる。
まず、足元の深刻な顧客離れにどう歯止めをかけるのか具体策が見えない。倒産会社の暗い印象をぬぐうには、航空機やサービス、商品などで新機軸が必要だ。
次に、国際線事業の縮小は当然だが重点路線が不明である。とくに今年は成田・羽田両空港の発着枠拡大にともない全日本空輸(ANA)や海外大手、格安航空会社(LCC)間で激しい競争が展開される情勢だ。
さらに国内線でも競争が激化する。東北新幹線は年末に新青森まで延び、九州新幹線も来春に博多−新八代が完成。新大阪−鹿児島中央が四時間強で結ばれる。
支援機構の計画は発展戦略が不足している。詳細な再建計画はこの夏にまとめられる予定だが、機構が日航は国民の足として今後も必要不可欠な存在と位置付けるならば丁寧な説明が必要だ。
会長兼最高経営責任者(CEO)に就任する稲盛和夫京セラ名誉会長には、スピード感のある経営を望みたい。根強い“親方日の丸意識”を払拭(ふっしょく)して社員の士気を高めてほしい。二度目の政府救済はないことを肝に銘じるべきだ。
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