建設業者や医師などが職能ごとに組織する国民健康保険組合(国保組合)が国庫補助金を受けながら加入者に手厚い上乗せ給付をするのは納得できない。政府はすぐに補助金の減額措置をとるべきだ。
厚生労働省が先に公表した全国百六十五の国保組合への国庫補助金の投入実態は、保険料が上がり続け生活が厳しくなっている一般国民の感情を逆なでするものだ。
自営業者らの市町村国保やサラリーマンの健康保険組合、全国健康保険協会(協会けんぽ、旧政管健保)などでは、本人、家族とも外来、入院を問わず医療機関の窓口で医療費の三割を支払わなければならない。
ところが実態調査によると、建設国保十二、歯科医師国保四、医師国保二の合計十八の国保組合が加入者本人の入院医療費の自己負担をゼロにしていた。家族を含めて入院医療費が無料、外来・入院とも自己負担の上限を一万円にとどめている組合もあった。
国保組合が自己負担をゼロ・低額に抑えられるのは、毎年三千億円もの税金が投入されるからだ。
国保組合から医療機関に払われる「保険給付費」への国庫補助金の割合は、どの組合にも支給される「定率分」32%に、組合の財政力に応じて最高23%の「普通調整補助金」が上積みされることになっているが、実際には十九組合が55%を超えていた。財政力とは無関係な「特別な事情」で「特別調整補助金」が加算されるためだ。
最も国庫補助金割合の高い「京都府酒販」では70・6%に達し、保険給付費に対する積立金の割合が二倍近くもあった。他の医療保険が赤字で保険料の引き上げを迫られているのに、である。
国保組合と他の医療保険との不公平が明らかなのに政府はこれまでほとんど改善してこなかった。与野党とも選挙対策として国保組合への国庫補助金を減らすことに反対してきたからだ。先の事業仕分けでも対象からはずされた。
長妻昭厚労相は改革を約束したが、二〇一〇年度予算案での国庫補助金の削減は一部で、本格的な見直しは早くても一一年度以降だ。他方、政府は後期高齢者医療制度への「協会けんぽ」からの「支援金」を減らすために一〇年度から健保組合や共済組合に肩代わりさせようとしている。
政府は速やかに国保組合の「既得権」を一掃し、国庫補助金は財政が逼迫(ひっぱく)している組合に限定すべきだ。国民に負担増を求める以上、公平でなければならない。
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