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【社説】

安保改定50年 『深化』の中に『進化』を

2010年1月20日

 日米安全保障条約の改定に署名してから五十年が経(た)った。日米両政府は同盟関係を深めるための協議を始めたが、条約の「光と影」を冷徹に見極め、新時代にふさわしい姿に「進化」させてほしい。

 鳩山由紀夫首相は改定五十年の談話で「わが国が戦後今日まで、経済発展を享受できたのは、日米安保体制があったからと言っても過言ではない」と指摘した。

 日本が基地を提供し、米国が日本と極東の安全のために軍隊を置く安保条約。その下で日本は戦火を交わすことなく、平和を維持してきたことは紛れもない事実だ。

 日本は軍事力を米国に依存することで、防衛費を抑制し、経済発展に専念することもできた。

 米軍駐留による日本の軍備抑制は「瓶のふた」論として周辺国に歓迎される一方、在日米軍の抑止力は、アジア・太平洋地域の平和維持に寄与してきた。安保条約が「公共財」とされる所以(ゆえん)だ。

 これらは安保条約の輝かしい「光」の側面であるが、「影」の部分も忘れてはならない。

 その一つが、国土の1%に満たない沖縄県に在日米軍基地の約75%が集中していることである。

 沖縄に過重な負担をかけることで、安保体制を維持している構図から目を背けるべきではない。

 日米の外務・防衛担当閣僚の共同発表には「沖縄を含む地元の基地負担軽減」が盛り込まれたが、首相談話は触れていない。決意が聞かれなかったのは残念だ。

 もう一つの「影」は米国の世界戦略とともに、自衛隊の海外派遣がなし崩し的に行われたことだ。

 日米防衛協力の範囲は当初の日本の施政下から、アジア・太平洋地域、今では世界へと広がった。

 米国のアフガン、イラク戦争に伴い、自衛隊は給油活動のためインド洋に、復興支援活動のためイラクに派遣された。

 幸い銃火を交える事態にはならなかったが、戦時の海外派遣は、憲法九条との整合性が問われた。

 日米両政府間で始まった同盟深化の作業は、安保条約の「影」を可能な限り取り除き、新たな役割を付与する作業でもある。

 国際社会は、核拡散やテロの脅威に加え、地球温暖化や食料・エネルギー不足、感染症、貧困など多様な脅威に直面している。

 これらの脅威にも対抗するため、日米安保を再定義するのなら歓迎したい。同盟は深化させるだけでなく、新時代に適応して「進化」させることが必要だ。

 

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