通常国会が始まった。小沢一郎民主党幹事長や鳩山由紀夫首相の「政治とカネ」をめぐる問題は徹底解明が必要だが、厳しい経済情勢の下、国民生活に直結する予算審議も疎(おろそ)かにしてはいけない。
小沢氏の資金管理団体による土地購入をめぐる事件で、元秘書の石川知裕衆院議員らが逮捕され、小沢氏が民主党大会で、検察との対決を宣言したためだ。
自民党など野党側は疑惑の徹底解明に向けて小沢氏らの参考人招致を求める構えを示し、民主党側はこれを拒否する方針を決めた。
七月に予定される参院選で、民主党は単独過半数確保を、自民党はその阻止を目指す。国会で論戦や運営をめぐる攻防が激化し、緊迫した展開となるのは不可避だ。
「政治とカネ」の問題は自民党政権時代には、政権の命運をも左右する宿痾(しゅくあ)のようなものだった。
政権交代後の国会でも依然「古典的な金銭スキャンダル」(渡辺喜美みんなの党代表)を俎上(そじょう)に載せなければならないのは残念だが、疑惑解明は国会の仕事だ。この際、徹底解明に努めてほしい。
小沢氏は国会の政治倫理審査会に審査を申し出たり参考人招致に進んで応じたらどうか。「潔白」と言っているのだから、なおさらだ。
民主党自身も疑惑解明へ自浄作用を働かせるべきだろう。
鳩山首相は党代表として、自らの偽装献金事件を含め、国民の政治資金に対する不信感の払拭(ふっしょく)に指導力を発揮すべきだ。
とはいえ国会論戦が「政治とカネ」をめぐる与野党攻防に終始すれば国民の期待を大きく裏切る。
鳩山内閣が初めて編成した二〇一〇年度予算案は、歳出規模が九十二兆円に膨らみ、国債発行額が税収を超えるなど異例だ。未曾有の経済危機下に編成された予算でもあり、従来とは重みが違う。
予算編成では、事業仕分け、政務三役主導、党への陳情一元化など、初めての手法も使われた。
日本経済や財政の状況、問題点を国民の前に明らかにする意味からも、予算自体や編成手法の妥当性を、与野党が徹底的に審議すべきだ。
政府には丁寧な説明を、野党側には単に揚げ足取りではない、建設的な追及を望みたい。
疑惑解明も予算審議も、という「二兎(にと)を追う」作業は至難だが、それを成し遂げてこそ、新しい国会の姿を国民に示すことになる。
この記事を印刷する