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天声人語

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2010年1月20日(水)付

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 曇り空の下、技術陣の気がかりは離陸や巡航ではなく、着陸だった。ジャンボ機の初飛行である。あの巨体が無事地上に降りるのか、との疑念が航空専門家の間にあったからだ▼開発リーダーのジョー・サッター氏が自伝(堀千恵子訳)に記す。〈威風堂々とした外洋航路船ばりに滑走路に降下してきたかと思うと、静かに滑空し、それはそれは見事な着陸をやってのけた……いまや真の飛行機が手に入り、成功もどうやら夢ではない〉▼空の旅を大衆化した立役者は明日、就航40年を迎える。ロングセラーの最大の顧客が、法的整理に入った日本航空だった。リストラの一環として、効率の悪いジャンボ37機をすべて退役させるという。一つの時代の終わりを思う▼評論家の佐高信氏は「役所と民間の悪いところを合わせたような会社」と辛辣(しんらつ)だ。政治に弱い体質に大企業病が宿っていた。ジャンボの大量購入も、対米配慮と無縁ではあるまい。空港を乱造した政治家、天下り官僚の責任は不問で、また税金が投入される▼日航でジャンボを長く操った田口美貴夫氏は、着陸より離陸が難しいという。高度も速度もゼロから燃料満載の400トンが突き進む。整備から操縦まで、すべてが完璧(かんぺき)で初めて機体は舞い上がると、著書『機長の700万マイル』にある▼国家管理という空港に不時着し、会社更生法の格納庫で身軽になる日航。初めての着陸に固唾(かたず)をのんだジャンボ開発陣のように、納税者は再びの離陸を厳しく見守りたい。天候がどうであれ、今度はしっかり飛んでもらう。

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