HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 21779 Content-Type: text/html ETag: "2a35c1-5513-83f87dc0" Cache-Control: max-age=5 Expires: Tue, 19 Jan 2010 21:21:06 GMT Date: Tue, 19 Jan 2010 21:21:01 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):社説
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

国会論戦―暗い民主主義はいらない

 政権交代して初の通常国会で論戦が始まった。小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体の土地購入をめぐる捜査が進むなか、荒れ模様の幕開けである。

 小沢氏は東京地検の事情聴取を受ける方向という。国会論戦でも当面は、この問題や鳩山由紀夫首相の偽装献金問題が焦点とならざるをえない。

 「政治とカネ」をめぐる与野党の泥仕合はおなじみの光景かもしれない。しかし、今回の一件が持つ意味合いは、これまでとは大いに違う。

 有権者が初めて自ら政権交代を実現させた直後である。多くの有権者は、かつての「金権腐敗」政治はもうご免だと願い、民主党に投票したはずだ。なのにまた同じことが繰り返されるなら、何のための政権交代だったのか。政党政治そのものへの失望が、今度こそ癒やしがたく深まりかねない。

 その危険を首相以下、政府与党の面々がしっかり感じているのかどうか、はなはだ心もとない。

 典型は首相が小沢氏に語った「どうぞ戦ってください」との発言だろう。

 自民党の大島理森幹事長は、19日の代表質問で「一国の首相の発言とは信じられない。誰と『戦う』ことを念頭に置いていたのか」とただした。検察の捜査に介入するつもりなのかという、至極もっともな問いである。

 首相は「私は行政の長であり、検察の公正な捜査を信じている」と答えたが、言葉の選び方や置かれた状況への感度が鈍すぎる。

 ほかにも首をひねるような動きが相次ぐ。民主党は一昨日「捜査情報の漏洩(ろうえい)問題対策チーム」を党内に設けることを決めた。検察による報道機関に対する情報操作の有無を調べるという。原口一博総務相も昨日、一連の報道に関し、情報源を明確にすべきだとの考えを述べた。逮捕された石川知裕衆院議員と当選が同期の議員らは「石川代議士の逮捕を考える会」をつくった。

 いずれも、小沢氏の「全面対決」路線に歩調を合わせようとするもののようだ。異様な光景の広がりである。

 総選挙での圧倒的な民意の支持を、はき違えているのではないか。検察も無謬(むびゅう)ではないだろうが、政権与党も万能ではない。様々な力が互いに抑制、均衡しつつ丁寧にことを進めていくのが、まともな民主主義社会である。

 小沢氏が検察を批判する際に語った「これがまかり通るなら日本の民主主義は暗澹(あんたん)たるものになる」という言葉は、むしろいまのような状況にこそ当てはまるのではないか。

 最優先すべきなのは、国会論戦を空費させないことである。小沢氏らは国会で事実関係の説明をすべきだ。

 そのうえで予算案審議や政策論争を本格化させる。政権交代後、「国会審議の活性化」論議を先頭に立って進めたのは、小沢氏だったはずである。

JAL法的整理―国民負担増やさぬ再生を

 政府の全面支援で日本航空を再生する取り組みが、正式に動き出した。日航がきのう会社更生法の適用を申請し、官民出資ファンドの企業再生支援機構が支援を決めた。

 政府が関与しての「事前調整型」法的整理で、昨年6月に米政府が自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)の再建に適用した手法だ。日本では初の試みである。

 日航は巨額の債務超過に陥り、政府支援なしでは清算に追い込まれかねないほど経営が悪化していた。安全運航を確保しつつ日航が担う国民の「空の足」の機能を再生するには、法的整理が避けられなかったといえる。

 日航のマイレージや燃料などの商取引債権は、守られることになった。さもないと客離れを招き、燃料購入が滞ったり機体を差し押さえられたりすることも懸念された以上、やむを得ない措置だといえよう。

 公表された再建計画では経営陣が総退陣し、社員を1万5千人削減する。現役・OBの企業年金は大幅カット、金融機関は債権の8割強を放棄。株券は無価値となる。

 こうして利害関係者が痛みを分かち合うだけでなく、国民も巨額の負担を背負い込む。確定している分だけでも、日本政策投資銀行による政府保証つき融資の焦げ付きで440億円の国民負担が見込まれる。

 政府ぐるみの支援が国民負担をさらに増加させる危険もある。それを最小限にとどめる努力が政府と日航に求められる。その意味でも、肥大化した路線網やサービス体制を現状のまま維持することは許されない。経営の徹底したリストラが必要だ。

 路線の一部を他社に譲り渡すこともためらうべきではない。一方、政府のてこ入れで競争相手の全日本空輸や新興航空会社が不利な立場に置かれるようなことがあってはならない。

 日航の経営の悪化は、自民党の長期政権と霞が関の官僚にも重い責任がある。過剰な国内空港建設を続け、不採算路線への就航を日航に求めた。そんな航空行政が「親方日の丸」の甘い経営を長年にわたり放置した。

 日航会長には民主党に近い大物経済人の稲盛和夫京セラ名誉会長が就く。世界的企業を育てたカリスマ経営者とはいえ高齢でもあり、個人の手腕に寄りかかるわけにはいかない。

 1985年のジャンボ機墜落事故の後、日航会長になった伊藤淳二元鐘紡会長は社内抗争や労使紛争に巻き込まれ、辞任に追い込まれた。日航の体質とも言われた派閥抗争や複雑な労使関係を一掃するにも、社内外から人材を抜擢(ばってき)することが求められる。

 日航は国民に対する責任の重さと過去の教訓をかみしめ、出直し創業に挑んでほしい。

PR情報