詩人の有馬敲(たかし)さんに『変化』という面白い作品がある。残念ながら、筆者は聴いたことがないが、詩集編集者の水内喜久雄さんによれば、フォーク歌手の高田渡さんが『値上げ』のタイトルで歌ってもいるという。こんな詩だ▼一行目はきっぱり、<値上げはぜんぜんかんがえぬ>で始まる。ところが<…とうぶん値上げはありえない/極力値上げはおさえたい…>などと次第に変化していき、やがて<…値上げは時期尚早である/値上げの時期はかんがえたい…>と▼何となく消費税の“値上げ”話と重ならないか。鳩山首相は昨年末、「この四年間に消費税を上げることは考えない」ときっぱり述べた。同じころ、菅副総理は議論を「今の段階でスタートさせるのは早い」と語った。だが、この十日には、来年にも議論を始めるべきだとの認識を示し…▼恐らく今後も、経済動向などにらみつつ、さらに微妙に「変化」していくに違いない。<値上げをみとめたわけではない/すぐには値上げしたくない>などと▼ただでさえ厳しい暮らしである。国民が歓迎するはずもないが、政府は「変化」で逃げてばかりもいられまい。結局、「無駄の排除も限界。財政や、社会保障の先行きなど考えると…」と言い出す気がする▼えっ、『変化』の結末? ご明察。こうなっている。<…値上げもやむをえぬ/値上げにふみきろう>