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「誤解を与え、ご迷惑、ご心配をおかけしていることを大変申し訳なく思っている」
民主党の小沢一郎幹事長はきのうの定例記者会見で「国民のみなさま」に向けてわびた。自らの資金管理団体である陸山会の土地取引をめぐる、資金の流れの問題についてだ。
秘書の寮用に購入した土地代の原資4億円がどこから出たのか、政治資金収支報告書に記載されていなかった疑いが持たれている。東京地検特捜部は、小沢氏の秘書だった石川知裕衆院議員を政治資金規正法違反で在宅起訴する方向で検討中だ。小沢氏にも事情聴取に応じるよう要請している。
きのうの会見は「誤解」を解く機会だったはずだ。なのに、小沢氏は「意図的に法律に反する行為はしていないと信じている」と述べただけで、あとは捜査中であることを理由に一切の具体的な説明を避けた。「区切りがついたら」説明したいという。
小沢氏がふつうの民間人なら、そうした対応もありうるだろう。しかし、与党民主党の幹事長、政権一の実力者である。刑事責任を問われる立場になくても政治責任は重い。
石川氏は地検に対し、4億円を小沢氏から受け取ったと説明しているというが、出どころはどこか。土地購入後に、小沢氏が銀行から4億円の融資を受け、陸山会に貸すという複雑な処理をしたのはなぜか。
小沢氏は、事情聴取に応じるつもりかという問いにさえ、差し控えたほうがよいで通した。
公設秘書が逮捕・起訴された西松建設からの違法献金事件を受けて、小沢氏は昨年5月、党代表を辞任した。それと比べても、問題は決して小さくない。西松事件では収支報告書への虚偽記載を問われたが、今回は不記載、つまり報告書に記さない裏のカネの疑惑だからだ。
にもかかわらず、小沢氏の政治責任を問う党内の声が、今回はほとんど聞かれない。小沢氏が鳩山政権への影響力をますます強め、夏の参院選や党運営を一手に仕切る。その威勢を前に、小沢氏にものを言いにくい空気が強まっているのではないだろうか。
自民党は小沢氏らの国会への参考人招致を求めているが、民主党は応じない方向だ。政権公約に掲げた企業・団体献金禁止のための法改正について、鳩山由紀夫首相は通常国会には提出されないとの見方を示している。
首相と幹事長にカネにまつわる問題が続いているのに、自浄作用を働かせようとしているとは思えない。
そんな姿には失望せざるを得ない。まずは、小沢氏がすみやかに全容を語る。参考人招致にも応じる。それが政権交代を選択した人々の期待に応える道だ。
年金に対する国民の不信を招いた社会保険庁が廃止され、年明けとともに日本年金機構がスタートした。
政府から年金事務を委託される特殊法人で、職員は公務員ではなくなった。自公政権時代の決定に基づく荒療治の産物である。
誰のものか分からず宙に浮いた年金記録の山。保険料の納付率を高く見せるための不正な手法。年金不信を広げた重大な責任が、社会保険庁にはあった。組織の体質や職員の意識を変えるために、大胆な改革が求められたのは当然だったといえよう。
民主党は野党時代、年金機構に関して「大事な年金業務を国から切り離して大丈夫か」「年金記録問題がうやむやにならないか」などと、疑問を投げかけてきた。もともと、年金を扱う組織については、保険料と税を一体で徴収する「歳入庁」をつくる構想を掲げてもいる。
年金機構の設置準備が進んだ段階で政権交代が起きたため、機構の発足を追認せざるを得なかったといういきさつがある。
しかし、経緯はどうあれ実際に発足した以上、年金機構は鳩山政権とともに、年金に対する国民の信頼回復へ総力をあげねばならない。
機構は「電話は3コール以内に出ます」といった「お客様へのお約束10カ条」を掲げた。だが、何よりも大事なのは、6割台にまで落ち込んだ国民年金の保険料の納付率を早期に回復させることではないだろうか。
社保庁時代にも、保険料を納めていない人への督促などの仕事を民間に委託する試みがあったが、成功しなかった。交通の便が悪い所には行かないなどの手抜きも一因だ。その反省をもとに、成果を出すことが必要だ。
民主党はいまも歳入庁構想を捨てておらず、新たな年金機構は将来廃止するとの姿勢を崩していない。
だが、いずれ廃止されることが決まっている組織に、期待通りの成果を上げさせることができるだろうか。
今は、年金機構を再び国の組織に戻すことを考えるより、まずはこの新組織で納付率を上げ、記録の管理や年金の支払いをしっかりと行うことが先決ではないか。
それでもなお、将来は歳入庁にというのなら、国民が納得できる道筋をきちんと描いてからにするべきだ。
年金不信の根は深い。保険料を払い続けても、将来まともに年金がもらえないのではないか、といった不安を抱く人は少なくない。
こうした不安をぬぐうには、財源確保を含む制度改革の議論が避けて通れない。そこに早く手をつけるためにも、保険料の未納を減らし、年金の記録をより完全なものにしていく真剣な努力が欠かせない。