「国に頼っていても、らちがあきません。我々企業が自ら需要を喚起するようにがんばるしかない」。経済同友会の桜井正光代表幹事(リコー会長)は最近、こう繰り返し述べている。企業も縮こまっていては駄目だというわけである。
▼ごもっともだが、人によっては空元気にすぎない場合がある。社長が旗を振っても、中身が伴わないと社員はしらける。デフレ経済で経営環境は厳しい。気持ちをなえさせるような悪い条件がてんこ盛りだ。しかし「成長を制約する要因にこそ商機があるんです」と、東レ社長の榊原定征さんはプラス思考である。
▼「当社は、独自の技術によって地球環境や資源の枯渇などの問題に解決策を提供すれば、成長できます」。炭素繊維などの機能素材や水処理に用いる逆浸透膜など、ネタはたくさんあるそうだ。とはいえ東レも、業績は当面大変である。「傾いた船がひっくり返らないように、コスト削減はとことんやっています」
▼「だけど絞るだけでは社員はやる気を無くしますよ。社内には過度に悲観的になるな、前向きにチャレンジしていけと言っています」。「成長戦略」だったら何時間でも語れると榊原さんはいうが、挑戦しても成功するとは限らない。「失敗ならいっぱいあります。ワッハッハッ」。この明るさも企業にいま必要だ。