政府は会社更生法の枠組みを使って日本航空の再建を進める方針を固めた。企業立て直しのために官民で出資した企業再生支援機構が、再建資金を出す。運航は継続しつつ、迅速かつ抜本的な再生をめざす。
日航再建をめぐっては、話を裁判所に持って行きいったん倒産させる法的整理と、銀行など当事者間の話し合いで立て直す私的整理の両論が対立してきた。結局は前者の路線で決着する見通しになった。
この結論は妥当なものだ。裁判所が絡む法的整理なら、外部からも再建の仕方が分かり、当事者間でのごまかしがききにくい。
私的整理で削減できるのは、主として銀行からの大口の借金にとどまる。これまでの経験からしても、単なる延命に終わる危険があった。法的整理では社債や年金債務など幅広い債務を削ってもらうことが可能だ。借金の重荷を減らし、今度こそ抜本的な再生に取り組める。
日航は1987年に完全民営化された。それなのに、どこか官営会社の雰囲気がぬぐえなかった。今回の経営危機でも「最後は政府が助けてくれる」とタカをくくっていたフシがある。甘えの構造を一掃する意味でも、法的整理は有効だろう。
一方で法的整理には破綻の印象がつきまとい、乗客や取引先に思わぬ混乱を引き起こす恐れがある。飛行機を安全に飛ばし続けるために、関係者は全力を挙げてほしい。
再建の主役となる再生機構は潤沢な運転資金を日航に供給することになっている。信用不安で燃料が調達できず、飛行機が止まるといった混乱を防ぐ必要がある。同時に経営陣の入れ替えや徹底した人員、機材、路線の縮小に踏み切るべきだ。再建を急ぎ、公的支援はできるだけ早期に終える必要がある。
再生に必要な機体のリース料などの削減幅は社債や借り入れとは差をつけるなど、裁判所にも柔軟な対応を求めたい。利用実績に応じて付与しているマイレージは保護し、乗客の日航離れを防ぐべきだ。
日航は裁判所と再建資金を出す再生機構が意思疎通を済ませたうえで、更生法を適用する事前調整型の法的整理となる。企業再生の有力な手法として、米国で一般的なこの手法を日本でも根付かせるため、関係者の努力が望まれる。
航空政策にもメスを入れるときだ。日航の経営危機には、需要の少ない地方空港を乱造し、そこへの就航を求めた航空行政の罪も重い。今回の事態を日本の航空産業再生の新たな出発点としなければならない。